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最近読んだ、祖国を捨てた二人の中国人の本を紹介することにする。尚「祖国を捨てた」とは祖国に愛想をつかし国籍も捨て日本に帰化したという意味。
先ず「私はなぜ中国を捨てたか」石平著 WAC社
石平氏は四川省成都出身。文革が終息した後1980年北京大学哲学科入学。1988年四川省の大学助手時代に神戸大学に留学(彼はこの時26歳にして初めて日本語をアイウエオから学び本書を日本語で書くほど熟達したのだから飛び抜けて優秀だったことがわかる)。彼は日本で在日中国人留学生と連携して祖国の民主化運動を支援。1989年6月4日の天安門事件は日本で知る。この事件で彼は幾人もの友人を失う。民主化運動を弾圧した中国共産党への絶望が深まりやがて祖国を捨てることになる(2007年日本に帰化)。
この本の中から特に印象に残った部分を紹介しよう。青字が引用部分
中国の反日教育について
2000年8月、夏休みを利用して四川省の実家に帰省した時のことである。大学一年生の甥が遊びにきた。日本からおみやげを買ってこなかったので財布から100元札数枚を出して小遣いとして彼に遣ろうとした。しかし意外なことに彼は「要らない」と言って下を向いた。「何だ、お前はお金が嫌いなのか」とからかった。「いや違う。だって叔父さんのお金は日本人からもらった給料だろう。そんなお金ぼく要らない」。それを聞いて私は言葉を失った。「もう一人の反日青年の誕生か」と心の中でつぶやいた。P85
反日教育の目的は、民主化運動弾圧、貧富の格差、官憲の腐敗等で共産党支配の正統性が大いに損なわれたので、日本と戦った共産党の栄光の歴史を思い出させ「日本軍国主義」をでっち上げることで国民の支持を繋ぎとめるためだと著者は解釈する。
日本の論語研究について
金谷治、宇野哲人、諸橋轍次、吉川幸次郎、岡田武彦等の論語に関する本を読みあさり日本の論語研究の広さ、深さに驚嘆する。P161
日本人の「やさしさ」について
著者は日本語の中で「やさしい」が好きだがこれにぴったりの中国語がないので中国人同士中国語で話す時でも「やさしい」だけは日本語になる。P174
次に「中国人民に告ぐ」金文学著 祥伝社黄金文庫
著者は東北(旧満洲)生まれの朝鮮系中国人で日本に帰化している。東北特に吉林省には朝鮮族が多い。
以下一部を抜粋する。
「徳と礼儀」の国はどこに行った
公衆秩序意識と礼儀のない中国人の姿は「バス乗車戦争」に最も象徴的に表れている。そもそも中国人はバスに乗る時列に並ぶということをしない。バスが停車するや否や老若男女が蜂の群のように乗降口に一斉に押し寄せるのであっちこっちで悲鳴や叫び声が上がる。上海ではある女性が座席を取ろうとして抱いていた赤ん坊を車窓から投げ入れその子が死亡する事故まで起きたほどだ。
上海に暮らした経験から同感だ。特に地下鉄乗降のマナーが悪く停車するや否や降りる人を待たず我先に乗ろうとするのは最悪だ。
1998年北京図書館でのこと。雑誌閲覧室で資料を探すために雑誌を捲っていると何と50箇所以上にわたってカッターで切り取った後があった。
上海図書館にはよく行った。そこではパスポートを基に年間利用料を支払い(日本円で400円前後)入館証を作り入る際認証を経る仕組みになっている。それだけでは不足と見えて大きいカバンの持ち込みはできない。だから図書館用に携帯電話、水筒、財布だけ入る小型カバンをわざわざ買ったほどだ。過去よほど盗みが多かったのだろう。ここで2日遅れで日本の各新聞が読めた。
付録
「中国がひた隠す毛沢東の真実」北海閑人(匿名)著 草思社
この本は中国官憲の腐敗ぶりを描いている。その中でも呆れたのが「骨壷ビジネス」。中国では、建国後おびただしい人々が迫害され、辺境の地に労働改造の名目で追放されその地で死んだ。肉親の消息を知りたい、もし死亡していればせめて遺骨でも収集したいという親族の切なる思いに付け込んだビジネスのこと。
収容所で死亡した親族を探し出し、かたっぱしから「お父さん(或いはお祖父さん)の遺骨を預かっています。ついては保管料として何がしか(日本円にして数十万円相当)払っていただければ引き渡します」と手紙を書き送りカモが実際に来ると適当に人骨を集めて渡すのである。P252~254
中国の官憲は人の命を無法にも奪っただけでなく、その遺族からお為ごかしに金をせしめているわけだ。
魏の曹操は「乱世の奸雄、治世の能臣」と呼ばれたが毛沢東は「乱世の奸雄、治世でも奸雄」だ。治世では能臣こそ必要とされる。
(ジャーナリスト 青木 亮)
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