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ここで東電は電力10社を代表する。この三者が抱える問題は共通している。事業の公共性、政官業癒着、非効率、地方政治家の利権等。
戦前、政治家は自らの選挙区に鉄道を敷くことが最高の選挙対策であった。「我田引水」ならぬ「我田引鉄」だ。それが戦後モータリゼーションの進展と共に赤字ローカル線が増え旧国鉄の重荷となった。
一般に中曽根内閣の唯一の業績として旧国鉄民営化が挙げられる。だが旧国鉄の30兆円にも及ぶ累積債務を、民営化されたJR各社が返済したのであればともかく実際には国民負担となったのだから成功と言えるかどうか疑問なしとしない(民営化のもう一つの狙いであった組合潰しは大成功と言えるだろう。労組を主な支持母体とする旧日本社会党は国鉄民営化と符節を合わせるように凋落の一途を辿り遂には消滅した)
せっかく旧国鉄の累積債務は「清算」されたけれどいわゆる整備新幹線が新たな赤字を生むのではないかと疑念が生じる。
同じように政治家と自治体の長は地方空港建設にやっきとなり、赤字承知で無理やり日航に路線を開設させた。日航は政官にたかられたという意味で多少同情の余地はある。
というわけで国鉄は民営化されたが累積債務は国民負担となり、日本航空は民営化後破綻し一部の債務は政府保証及び政府系金融機関の貸し倒れを通じて国民負担となった。
では電力会社はどうか。発電所の中、特に原発は迷惑施設として漁業補償等莫大な地元対策費が必要となるが、基本的な構図は旧国鉄、日航と変わらない。
原発を作る際、札束で反対派を黙らせるやり方は田中角栄の発明(?)になるものだ。東電の二つの原発が田中角栄(新潟)及び田中派の重鎮渡部恒三(福島)の選挙区にあるのは偶然ではない。渡部恒三は水戸黄門を自称しているが、本物の黄門さまと違って相当に生臭い。というわけで新潟と福島は東京のために犠牲を強いられているという言い方は過度に単純化した図式だ。新潟と福島には原発によって潤っている人も大勢いる。国会議員、自治体、自治体議員、ゼネコン、電気工事会社等。
(電力会社は供給責任を負わされる見返りに絶対に赤字にならない料金設定を政府から認められている。この点競合する交通手段があったため赤字が累積し遂に破綻した国鉄、日本航空とは違い、郵便事業に近い。彼らにコスト意識が乏しいのも当然だ)
東電処理案
莫大な廃炉処理費用、損害賠償債務を東電単独で負担することはできない。
いくつかの試案がある。一、今の株式形態のまま存続させ、被害者救済が東電の財務能力を超える分は政府が補填する、二、被害者救済のために完全国有化する、三、奉加帳方式によって他の電力各社にも負担を求める。他の電力会社に負担を求める三の実現可能性は乏しい。一又は二が有力だ。いずれにしても国民負担は免れない。問題はその後送電発電分離ができるかどうかだ。分離した上で送電線利用料を引下げれば発電があらたな産業となる可能性がある。
勝間和代さんの「お詫び」
http://real-japan.org/2011/04/15/421/
注意深く読むと「自分は(科学的に)間違ったことを言ったわけではないが、人々の不安、風評被害等といった不合理な要素を理解していなかった」と取れる。「お詫び」というより居直りだな。お詫びといいながら今後への提言を行っている。図々しい。
ビートたけしの「原発を東京湾に」
ビートたけしは昔から「原発を東京湾に」と言っている。昨日テレビでその理由を「そうすれば電力会社は絶対安全なものを作るだろう」と言っていた。「絶対安全」という発想が如何にも元理系だ(明治大学工学部中退)。リスクは自然災害だけではない。テロも戦争もある。ミサイルや爆撃の標的になれば「絶対安全」など吹っ飛んでしまう。
(ジャーナリスト 青木 亮)
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