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De São Paulo para Japão-Saitama- Report
サンパウロからさいたまへ 第8回
下村政裕
読者から下のような2つのご質問をいただきました。
「私とサンパウロのかかわりは?」
「ブラジルの経済はどうなっていますか?」
です。
本当にありがとうございます。
経済については、私はまったくの素人であり、少し時間をいただくとして、
今回は、まず、1つ目の質問について回答をしたいと思います。
私とサンパウロのかかわりは
私は、現在、独立行政法人国際協力機構(JICA)の専門家として、家族と共にサンパウロで暮らしています。
今回の赴任期間は、平成19年7月18日から平成22年7月17日までの3年間。
JICAは、外務省所管の独立行政法人で、政府開発援助(ODA)、すなわち日本政府が、開発途上国に対して行う資金や技術の経済協力を実施している機関です。
具体的には、日本と相手国の2国間において、相手国からの要請に基づき、無償資金協力、技術協力及び有償資金協力(円借款)という3つの援助手法を効率的に使うことによって、日本政府が行う国際協力を実施しています。
私は、ブラジル政府が日本政府に対して要請することにより成立した「無収水管理プロジェクト」(通称、EFICAZ Project、エフィカスプロジェクト)という技術協力を行う専門家としてサンパウロに家族と共に赴任しています。
JICAは、昨年10月1日に、国際協力銀行(JBIC)と合併(JJ統合)市、新JICAとして生まれ変わりました。
写真は、新JICAを広報するサンパウロで行われたセミナーで挨拶をする、JICAブラジリア事務所の芳賀所長。
ここで、皆様方は、いくつかの疑問がわいてくると思います。
その1 ブラジルは途上国か?
もう一つの読者からいただいた質問とも関連しますが、BRICsの一員でもあるブラジルは、もはや途上国とはいえないと私も思います。
ただし、今までもブラジルについて書いてきた通り、日本で暮らしていては、思い描けないほどの多様性の国であるブラジルでは、とてつもない富からとてつもない貧まで、まるでグラデーションのごとく存在しています。
そして、その様々な分野で持つ技術も然りで、我々のフィールドである無収水の管理(後述します)の分野では、まさに途上国さながらといえます。
そして、メガ都市であるサンパウロでのこの課題は、地球規模の環境問題にも影響を与える可能性があり、同じ問題を抱えるブラジル国内の水道はもとより、中南米地域の水道のリーダーとしてサンパウロの水道が成長することに、日本の協力の意義があります。
加えて、技術協力から有償資金協力である円借款事業として、この無収水管理プロジェクトを繋げていくことが、日本そしてブラジルの双方にとって、今回のブラジルに対する技術協力プロジェクトの大き「win win」の期待成果であると考えています。
その2 なぜ、さいたま市水道局の職員が派遣される?
もともとは、政府の行う技術協力ですから、水道に関することは、所管する厚生労働省が実施するのが筋だと思われると思いますが、水道事業は、水道法により、市町村経営が原則とされています。
したがって、水道の事業運営や技術的なことに対する具体的な援助を行う適切な人材は、実際に水道事業を経営している事業体にいるということになります。
そのような背景から、水道に関する国際協力は、厚生労働省からの推薦を受けて水道事業体である市町村が、実施してきているのが現状です。
水道事業体における国際協力は、日本が国際協力事業を実施するようになった時点から実施されてきており、特に1970年ごろから、東南アジアやアフリカの諸国を中心に、技術協力として専門家派遣や研修生の受け入れを実施してきました。
私は、若いころから、国際協力に興味があり、今まで、ラオス国を中心に公私にわたり関与をさせていただいてきたところですが、2000年にサンパウロの水道で、無収水管理に対する専門家の派遣を希望しているとの話が当時の厚生省を通じてあり、手を上げさせていただいたのがきっかけで、現在、家族と共にサンパウロに住んでいます。
その3 無収水管理ってなあに?
水道は事業であり経営です。
環境水である水資源を、飲用に適した水に浄水し、水道管を通して、お客様に配っており、これら浄配水などにかかわるコストは、原則として水道料金で回収をさせていただいております。
したがって、環境から取水した水を、100%お客様に給水し料金を回収させていただくのが理想ですが、現実には、料金として回収できない水量が存在します。
例えば、水道管である配給水管から漏れ出てしまう水であったり、水を浄水する過程で必要な水量であったり、更に配給水管をきれいに維持するために必要な水量などです。
これらの水は、水道料金として回収でき無い水量であり、無収水量と呼んでいます。
これに対して、料金回収できる水量は、有収水量と呼んでいます。
日本の水道事業体における無収水量のほとんどは、配給水管から漏れ出る漏水で、全国平均でも、配る水の全量に対して、10%を切っていますが、多くの途上国では、漏水以外の水量もかなりあり、無収水量全体としては、総配水量の30%を超えているのが実情です。
途上国における漏水以外の無収水の内訳としては、スラム街への社会需要水、違法給水やメータを回らなくしてしまうなどの盗水、あるいは水量を測るメータが設置されていないあるいは設置されていても正確に計量していないために発生する水量もかなりあります。
ここブラジルでも、統計上40%台後半であり、つまり配っている水の半分近くが、水道料金として回収できない水となっています。
特にサンパウロ都市圏では、2千万人近い人々が生活しており、ここで消費される環境水は、無収水も含めて莫大な水量ですから、自然界の持つそれまでのごく自然な水循環に対して、人口が激増したこの数十年の間に、大きな影響を与えるようになってきたことは間違いありません。
また水道事業を経営するという観点からも、必要以上の水量を大量に取水し、浄水のために莫大なコストをかけ、かつ場所によっては、多大な電気力を使って無駄な水も配水しなければならないという、非効率的な経営を余儀なくされているということになるわけです。
ですから、この無収水を適正に管理して、無収水量そのものを削減していくことは、単に水道事業体の問題ということではなく、重要な環境問題でもあり、社会的な課題であるとの認識に立っています。
無収水の管理は、配水された水がどのようにお客様に届くかを把握することが基本。
そのためには要所での流量測定が必要であり、EFICAZプロジェクトでも日本から供与した流量計を使って配水流量等の測定をしています。
EFICAZプロジェクトのHP : http://www.jica.go.jp/project/brazil/0603487/
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