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首相の「浜岡原発停止要請」には賛否両論喧しい。それぞれの言い分を検討してみることにする。
先ず首相及び「要請」支持派の言い分
1. 発生確率の高い東海地震予想震源地のほぼ中心にある。
2.安全対策(特に津波対策)は今回規模の津波を想定したものではない。
3.20キロ圏内に東海道線、東海道新幹線、東名高速、国道一号線があり、事故は日本の大動脈に深刻な打撃をもたらす。
4. 中部電力の原発依存度は14%と比較的低く、これを停止しても失われた供給能力をカバーするのは難しくない。
5. 中部電力が属する西日本圏の電力需給は東日本圏に比べて余裕がある。
6.事態は急を要するので超法規的な「要請」も止むを得ない。
反対派の言い分
1. 法的根拠のない「要請」は「裁量行政」の最たるものであり、これこそ官民癒着の基礎である。法に基づく行政こそ近代国家の原理である。許認可権をもつ政府の要請は命令に等しい。ところが命令ならその法的根拠を裁判で争うこともできるが「要請」では裁判の対象になりえない。形式的には拒否する自由があるからだ。これまで安全基準に適合しているとしたものをある日突然不適合とされたのでは法治国家ではない。
2. 政府の裁量によって年間2500億円もの負担増を一企業に強いることができることが明らかになり、日本企業の株式と社債の価値が大いに損なわれ、投資家は日本の証券市場を見捨てる。法的根拠のない「要請」に基づき営業を停止し、その損失を政府が補填するのであれば民間企業とは言えず株主や社債権者を欺いたことになる。
3. フクシマの最大の教訓はECCSと全予備電源の喪失であり、この点浜岡では一応の改善措置が取られたので、フクシマの再現はない。
4.中部電力の経営陣は株主代表訴訟のリスクに晒され、訴えが認められれば全役員は破産してしまう。
5.九州電力と東電への応援送電ができなくなり、電力需給逼迫は全国に波及する。
6.中部電力は「要請」を受諾すると同時に国の財務支援を要請し政府もそれに応えると言っている。政府による支援は国費投入または電気料金値上げ認可のいずかが考えられる。いずれにしろ国民全体の負担となる。
7. 電源立地交付金を当てにしている自治体(御前崎市)の財源をどう賄うのか。といったところか。
菅首相は「フクシマによって浜岡原発のリスクも高くなった」と言っている。だが今度の大地震と大津波を予測した専門家はいない。それどころか阪神淡路大地震、中越地震を予測した専門家もいない。そんな専門家が言う「30年以内に87%の発生確率」を信じていいのか。
私は地震学者の予想など「当たるも八卦当たらぬも八卦」の大道占の類だと見ている。従って問題は、発生確率に怯えるのではなく、フクシマの事故原因を究明し、使用済み燃料の保管方法等の教訓を他の原発の安全対策に活かすことだ(非常用電源の位置等既に改善されたものもある)。停止させるにしてもフクシマ終息まで数ヶ月の猶予期間を設け、再開条件を明確にしてからでもよかったのではないか。
フクシマは図らずも「想定外」の大地震、大津波、無能きわまる電力会社と政府、それなのに外国の智慧と経験に頼ろうとしない見栄っ張り等凡そ考えられる最悪の条件が重なったら何が起こるかを如実に示した。見方を変えればあれ以上悪いことは起こらないことを証明したようなもので純理論的には原発推進派にとって強ち悪い話ではない。
話変わって東電処理案
損害賠償債権を最大限保障すること、国民負担(電気料金値上げ又は国費投入)を最小化すること、この二つの要請を同時に達成するには現経営陣を排除し一時国有化しリストラを最大限行うしかない(リストラと言えば専ら首切りの意味に用いられるが、本来の意味のリストラつまり事業再構築)。実質国有化の手法としては政府が新株を引受け過半数の株主となるやり方が有力だ。
リストラと言えば尾瀬国立公園の約4割を東電が所有している。だが原則建築不可の国立公園とあっては高い値では売れそうもない。
JR西日本福知山線事故、トヨタのリコール対応、福島原発事故、みずほ銀行のシステム障碍、ソニーの個人情報漏洩の根っこは同じで想像力の欠如である。そもそも想像力豊かな人材は組織の「和」を乱すとしてトップになれない大企業の体質がある。トヨタのリコールは「冤罪」であった可能性が高いがそうであればあの時果敢に反撃すべきであった。「取り敢えず謝っておこう」はジャパニーズスタンダード。
(ジャーナリスト 青木 亮)
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