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De São Paulo para Japão-Saitama- Report
サンパウロからさいたまへ 第9回
下村政裕
今回は、読者からのご質問の、
「ブラジルの経済はどうなっていますか?」
に、がんばって、回答してみたいと思います。
ブラジルの経済について
興味がある方もたくさんいらっしゃると思いますが、残念ながら、自分は、水道の技術者であり、経済についてはまったくシロートですので、ちゃんとしたお答えは出来ません。
しかしながら、現在のブラジル経済の状況について、生活をしていて感じたり、仲間から聞きかじったりしたこともありますので、そのあたりを書いてみます。
あくまでも、サンパウロに住んでいる者の、個人的感想として読んでいただければ幸いです。
さて、アメリカ発の金融危機の前後して、サンパウロで生活していますが、ここでは、まったくといっていいほど、不況といったことは感じられません。
相変わらずいたるところで、道路、地下鉄、高層の建物の工事をやっていますし、週末の大型ショッピングセンターは溢れるほどの人の出です。
道路を走る車は、ほとんどが、日本で言う2000ccクラスの小型乗用車ですが、新車がとても多いです。
高速道路網が発達したサンパウロ。
写真は日曜日だが、平日の市内は慢性渋滞で、この解消に向けて、外環道路などの整備が進むほか、左の写真のような大規模な斜張橋による新たな橋梁工事なども進む。
ちなみに2000年に初めてサンパウロに来た時には、道路は、数十年物の汚い車で溢れ、ピックアップの後ろに人を乗せていたり、パトカーがサイレンを鳴らしてしょっちゅう走り回っていたりしていました。
が、現在は、そういった光景にぶつかることは滅多にありません。
既に、こちらに引越してきて1年半が経ちましたが、我々は、こんな好景気で大丈夫なのかと不安になることはあっても、危機感を感じることはありません。
写真のような高層建築物もサンパウロ都市圏内のいたるところで工事が行われている。
それでも、マスコミ等に発表される車やTVの販売台数あるいは失業率などのいわゆる経済指標は、悪化をたどっているようです。
どこかと似ていませんか?
ブラジルでは元々貧富の差が極端に激しく、こうした経済危機をまともにこうむるのは、貧困層の方々のようです。
日本でも、自分の身近の人間は、口では大変だと言っていますが、それほど社会不安を感じたり、生活に危機意識を持っていたりはしていないようです。
でも、実際に派遣切りなどで、職のみならず衣食住の全てを失っている人がたくさん出てきていますし、実は、自分の知り合いにも派遣切りに合い、親元に住んでいるところから、住むところまでは無くしていませんが、家庭の経済状況は思わしくなく、途方にくれている友人もいることは事実です。
一億総中流といわれた時代はとっくに終わりを告げ、貧富の差が広がり、いわゆる今までなかった超貧困層と呼ばなければならない人たちの層が出来つつあることが、大変に気になります。
さて、ブラジルの話に戻りますが、基本的にアメリカ発の金融危機は、まともには被らなかったようです。
その理由ですが、
国内金利が高かったため、ブラジルの投資家達は、サブプライムローンには、手を出していなかった。
ブラジルの金融システムとして、国内の銀行は、中央銀行に預託金として一定額を納める義務があることと
過去にハイパーインフレを経験していたため、元々、ブラジル国内の銀行は、派手な投資をしない。
また、自己資本率も高く、健全な経営を維持できたこと。
そして、中央銀行が、上記の預託金制度をうまく利用して、国内の金融市場に還元するなどの措置をとったこと。
等があげられるようです。
確かに、ドル不足や貸し渋り、輸出の落込みといった現象は起きましたが、基本的にブラジルは石油、鉱石、農産物など豊富な資源に恵まれた内需型の国。
また楽天的な性格のブラジル人は、ローンを気軽に利用して、高額な電化製品や車などをどんどん購入しています。
地下鉄も工事もいたるところで延伸工事や、既存の近郊鉄道線との接続工事などが進む。
上の2枚は、地下鉄の車内で、新しい車両が導入されることを知らせている。
左の地図は、現在の地下鉄と近郊鉄道の路線図。
アメリカ発の金融危機で、一瞬、国内消費に影が出たようですが、ルーラ大統領が、高い自動車税をいち早く免税する更に、冷蔵庫や洗濯機などの家庭電化製品の税額も下げるなどの措置をして、生活関連の消費が国内の内需を支え続けているようです。
この金融危機以前でも、6年以上の値上がりが続いた末に値上げが止まっただけで、慎重であった消費者に購入意欲がわいて出ていたところでした。
そして今回税の免税や引き下げにより、乗用車、液晶テレビ、電化製品、家具等が値下がりし、買い得感が魅力となっています。
実際に、今回の世界的金融危機の直後、国内需要を対象にしている生産ラインの一部も一時的にストップしたようですが、上述した消費者の購買意欲を背景に、フル稼動体制に戻っているようです。
ブラジルはまだ成熟した市場とは言えないようで、商業等や農業分野が元気であっても、ブラジル経済を引っ張る力はなく、製造業が80%以上の経済効果を生みだしているとのことです。
したがって、製造業が元気であれば、ブラジル経済は大丈夫だということがいえるようです。
一方で、マイナスの要因もあります。
一つ目は、労働市場の悪化です。
もともと、大企業は雇用増加に10年以上も貢献してこなかったようです。
そして、中小企業に対する貸し渋りがいまだに続いていて、今回の金融危機で更に拍車がかかっているようです。
製造業や建設業の多くの中小企業は、需要があっても運転資金切れで、街角の建設現場を確認すれば、働いている人の数が減少していることが確認できるくらい労働者を雇うことができず、工事や生産を継続できない中小企業があり、労働市場も直撃をしているとのことです。
二つ目は解雇問題。
欧米や中国の輸出に特化した生産ラインが沢山あり、今回の金融危機以降、これらのラインの生産が完全に止まっている状況で、製造業を中心に職員全員が解雇され、マスコミが大きく取り上げました。
更に三つ目は、上記解雇問題と重なりますが季節労働者の問題。
ブラジルでは、季節労働者が建設業や製造業などの需要増を支えています。
ここ数年の製造業はほとんど新しい雇用を生み出していないので、今回の世界的金融危機で止まった輸出製品のラインは、働き口のマイナスとなっています。
通常ならば年末商戦等に向けて生産量を増やす時期に、今回の金融危機で受注が減った企業は、季節労働者の再雇用を拒み、失業率が急上昇していると聞きました。
背景には、労働法により、雇用者の給料は、雇用者の承諾なしには下げられないということもあるようです。
ちなみにサンパウロ州で金融危機前の3年の雇用増はエタノールやパルプ工場など農業分野だけだったということです。
そして最後の4つ目として、日本を中心とした出稼ぎ労働者の問題です。
出稼ぎの方々は、例えば、そのまま日本に住み着く人を除けば、お金を稼いでブラジルに帰ってくるそうですが、帰ってくる人は、おおよそ2つのグループに分けられるそうです。
一つは、帰省して、起業を試みる人達。
もう一つは、日本で得た技術力等を使ってブラジルで再就職をしようとする人達。
しかしながら、いずれもあまりうまくいかないようです。
日本のノウハウを活かした起業には失敗する例が多く、再就職も、日本と同様のポテンシャル、地位や仕事を求めても、現実には、受け皿がないようです。
基本的に、ブラジル国内で稼げる人は、出稼ぎにはあえて出ないといった背景もあるようです。
こうして考えてみると、今回の世界的恐慌は、ブラジルでも影響がないわけではないですが、中産階級以上の国民はほとんど影響を受けず、最低賃金で働くような低所得者層や、やはり裕福ではない出稼ぎの方々が犠牲になっているといえるのではないかと思います。
ブラジルでは、元々そういった層があり、社会的に認知もされ、社会復帰のプログラムや手を差し伸べる公私にわたるシステムのようなものが出来上がっているので、言葉は悪いですが、今更、大騒ぎになるということは無いようですが、日本の場合は、そのような層が出来つつあることすら、認知されていないでしょうから、事は重大だと日本の外にいて、感じています。
サンパウロ都市圏内のファベーラ(スラム街区)の人口は、150万人とも言われている。
ここで生活する人達が、最低賃金で働くことにより、中流以上の人達の生活を支えているといえる。そして経済危機の影響を受けるのも、こういうところで生活をする人達・・・。
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