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先週17日平沼赳夫衆議院議員が、「事業仕分け」でのスーパーコンピュータに関する蓮舫さんの発言を批判した。政見批判だけならいいけれども蓮舫さんが帰化人であるという出自を取り上げ「元々日本人じゃない」と言ったことは問題だ。帰化すれば選挙権被選挙権を含めて日本人として完全な権利が与えられる。それを忌々しく思っている日本人は多いが精々陰口に止まり平沼氏のような高い地位にある人が公言するのは珍しい。
平沼さんは、憲法第十四条「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」をご存じないのだろうか。それとも平沼さんの憲法解釈ではここの「国民」に「帰化人」は含まれないのだろうか。もし三国同盟の推進、検察ファッショ等で昭和史に悪名高いご先祖の平沼騏一郎のことで悪口を浴びせられたら彼は本条を根拠に抗議する権利がある。「己の欲せざるところを人に施すなかれ(論語)」。ご先祖の功績悪行ともに子孫に及ぼさないのが近代国家である。
日本があらゆる面で元気がないのは人口減少過程に入ったことが大きく響いている。人口増加政策の一環として移民と帰化促進がある。だが平沼さんのように考える人は決して少数派とは思えないところにこの問題の難しさがある。
一方アメリカが依然として経済成長の余力が大きいのは人口増加によるところが大きく人口増加は主として移民の増加が寄与している。
アメリカだって有色人種への偏見或いは移民への偏見とは無縁ではない。20世紀初頭のカリフォルニア州の日本移民禁止、第二次大戦中の日系人の拘束(同じく交戦国でありながらドイツ系、イタリア系は拘束されなかった)と財産没収等。原爆完成前にドイツは降伏したがもしそれ以前に完成したとしてアメリカはドイツに原爆を投下しただろうか。これは興味ある歴史的イフだ。
だがこうした偏見は徐々に確実になくなりつつある。JFケネディはアイルランド移民の三代目でありキッシンジャー、オルブライト国務長官はそれぞれドイツとチェコからの移民だ。わが日系移民の子孫にもダニエル・イノウエ上院議員がいる。原爆開発の中心であったエンリコ・フェルミはイタリアからの移民。ピアニストのホロビッツ、指揮者のワルター、映画のチャップリンみな移民である。
黒人であるキング牧師の誕生日1月15日はアメリカの祝日になっているし一昨年には史上初めて黒人大統領が誕生した。今アメリカでは「黒人」は禁句となっていて代わりに「アフリカ系アメリカ人」という。「白人」はよくて「黒人」はいけないとすることで端無くも彼らの白人優越感情を表している。だがWASPは確実に死語になりつつある。
野球のスタルヒン、王貞治、金田正一等能力だけが問われるスポーツの世界では外国の血を引く人は珍しくないが政界でこうした人々が活躍するには尚大きなハンディキャップがある。蓮舫さんの他には故新井将敬くらいしか思いつかない。
日本のような風土で海外の優れた才能が日本を移民先として選んでくれるかどうか甚だ心もとない。
他に日本人の偏狭なナショナリズムを表す事象をいくつか挙げてみる。
海外で飛行機事故が発生するとニュースで必ず日本人乗客の有無を報ずる。日本人乗客がいなければ外国人が何人死のうと構わないと言わんばかりだ(もっともそうしなければ報道機関や航空会社に肉親の安否を尋ねる問合せが殺到するという事情はわかる)。
オリンピックの金メダルやノーベル賞受賞に大喜びする。これは白人コンプレックスの裏返しでもある。私にとってはオリンピックやサッカーワールドカップでは世界最高のアスリートを見たいのであって予選通過も覚束ない日本人選手はどうでもいい。
今年中にもGDPで中国に抜かれるという報道に心を痛めている日本人が多い。こうした人達は豊かになりつつある隣人のおかげで日本経済が底上げされていることを忘れている。貧しい隣人より豊かな隣人がいいに決まっている。
「知性」の定義は種々あるけれど私の辞書では「偏見から自由であること」と定義している。
(ジャーナリスト 青木亮)
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