トップページ ≫ 未分類 ≫ サンパウロからさいたまへ 第11回バイオ燃料
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De São Paulo para Japão-Saitama- Report
下村政裕
前回は、雨の話題を提供しましたが、3月を迎える今現在も、ほんとに良く雨が降っているサンパウロです。
ところで、昨年の12月からのこの雨が一つの要因で、毎日のように利用させていただいているタクシーの運転手(カルロス)さんから、自分としては、ちょっとびっくりするようなことを耳にしました。
大雨が降って、バイオ燃料に思いを馳せるということですが、自分が乗せていただいているこの運転手さんのタクシーは、いわゆるガソリン100%(後述しますが実際には、75~80%)からエタノール(バイオ燃料)100%でも走れるフレックス車で、当然、毎日、ガソリンより安いエタノールを100%給油して走っています。
ところが、この間、エタノールの話題が出たとき、今はガソリンを入れているんだとの発言。
思わず、耳を疑いました。
エタノールの方が安いのになぜ?
そして、もう一つは、環境対策としてエタノールを使っているんじゃないの?
と二つのことが、驚きとも疑問ともなって頭の中に沸いてきました。
最近、日本でも、バイオ燃料のことはよく話題に上がっているようなので、皆さんもブラジルのバイオ燃料は、サトウキビから作られているということはよく知っていらっしゃると思います。
私は、ブラジルに引っ越してくる前は、バイオ燃料は食料とバッティングするとの記事を見て、いくら環境に優しくても、食糧危機を産むようなものではだめだなと思っていました。
しかし、サトウキビから作られるバイオ燃料は、アメリカのとうもろこしと違い、一般的には、砂糖の副産物として生産されるため、食料とバッティングしないということを知り、バイオ燃料について新たな興味がわきました。
ブラジルのバイオ燃料のことについてしっかりと勉強をしたいと思ったほどです。
それで、早速、文献調査をしてみました。
ブラジルでは、1970年代のオイルショックの反省からバイオ燃料に取組んだこと。
その当時から現在に至るまで、ガソリンに20~25%のエタノールを混ぜることを義務付けていること。
85年には、エタノールを100%燃料とする車が開発され、一大ブームになったこと。
90年代に入ると、政府の補助の中止やエタノールの供給量不足などで消費者のエタノール専用車離れが急速に進んだこと。
90年代後半には、エタノール専用車の生産シェアは1%以下まで低下したこと。
それが2000年代に入って、石油の高騰や地球温暖化に代表される環境問題への関心の高まりなどを背景に、2003年に各自動車メーカーが、ガソリンとエタノールをどんな混合率にしても走れるフレックス車の生産を始めると、ブラジル国内はもとより、世界的にバイオ燃料への関心・期待が高まったこと。
そして、ここブラジルでは、現在、フレックス車の月間販売台数は、新車の90%前後と主流となっていること。
等を知ることが出来ました。
サンパウロ都市圏から一歩、外に出れば、そこは広大なサトウキビ畑が延々と続く。
100年から200年前はマタアトランチカ(大西洋森林帯)。
切り開かれて広大なコーヒーファゼンダ(大農園)に。
そしてコーヒーが衰退すると共に、ブラジル人の主食を支える大規模穀倉地帯へと様相を変えたが、それが今は利益安定性が高いサトウキビ畑へ取って代わる。
ところが、更に聞きかじったところ、ブラジルでは、副産物である糖蜜とさとうきびの搾り汁を混ぜて生産しているので、砂糖の副産物とは言えず、工程を変えることで、砂糖か、エタノールのどちらかを生産しているということがわかりました。
つまり、砂糖の価格が高いときは砂糖を、安いときにはエタノールをと環境問題とは程遠いところで生産調整がなされているようで、ちょっとがっかりした次第です。
それでも、「とうもろこしは、人間や家畜の食料・飼料であり、また、デンプン(コーンスターチ)や油など、思い出せ無いほどの物の原料であるのに対し、サトウキビから生産される砂糖の生産量の増減は、それほど人々の生活に重要な影響を与えるものではない」というのは、私のブラジルの師匠の弁です。
ちなみに、私の大好きなカシャーサ(サトウキビから作られるお酒)ともバッティングをしますが、生産量が桁違いのようで、バイオ燃料と砂糖の狭間の中でも、カシャーサの値段が乱高下するような大きな影響はないとのことで、これには少し安心をしました。
ブラジル人は、環境問題に関心が高く、それで、CO2の削減効果が高いバイオ燃料が世界に先駆けて使われていると一旦は理解をしたわけですが。
現実は、そうではなかったのですね。
そして、やはり、消費者は、安いから使っていただけで、しかも、ガソリンを入れるのか、エタノールを入れるのかは、結果的に砂糖の価格や、政策的に決められるガソリンとエタノールの価格比で決められているとも言え、今はかなり複雑な思いをしているところです。
左が今年の写真で、右が1年半ほど前にたまたまとったガソリンスタンドの写真。
普通ガソリンは、左が1リットル当たりR$2.599で、右がR$2.499。
A Comum(アルコール)は、右の写真ではR$1.499であるのに対し、左の現在の写真ではR$1.899となっている。
自分が来伯した2007年の8月頃のアルコールの価格はR$1.00程度で、現在スタンドによっては、R$1.999というところもあるところから、2年半で約倍になったとも言える・・・
それでも、ガソリンよりは、バイオ燃料であるアルコールの方が安いことには変わりが無いが・・・
以下、サンパウロのバイオ燃料事情です。
エタノールの方が燃費が悪い
暑い時期のカルロスの車の燃費(サンパウロは交通渋滞が激しくあまり走れない)
エタノールは、4km/リットル 100kmを走るのに25.0リットルを消費
ガソリンは、6km/リットル 100kmを走るのに16.7リットルを消費
現在のエタノールの価格 R$1.842( 92.1円) 100km走るとR$48.05
現在のガソリンの価格 R$2.481(124.1円) 100km走るとR$41.43
ガソリンの方が安い・・・
ブラジルではガソリンには、25%のエタノールを混ぜなければならない
エタノールの生産量不足で、エタノールの値段が上がると必然的にガソリンの値段もあがります。
毎年1月から2月にかけては、通常のサトウキビの収穫が終わって生産量の減る時期に加えて、今夏は、雨の影響で、収穫高そのものも例年より上がらなかったため、ガソリンへの混合率も暫定的に20%とする措置がとられています。
更に、ガソリンの高騰を防ぐため、ガソリンにかけている税率を下げる措置もとっています。
ブラジルの車はガソリン100%ではうまく走らない
前述のように、70年代からブラジルでは、ガソリンにエタノールを20~25%混合することを義務付けていたため、逆に、ガソリン100%では、エンジントラブルを起すことがあるようです。
したがって、中南米でもガソリンにエタノールを混ぜていないアルゼンチンを、ブラジルの車で旅行するときは、例えフレックス車でも不具合が発生する場合があるようです。
通常の公務員や会社員では、中々、新車は買えない
確かに道路には、新しい車も溢れていますが、それもサンパウロの中心街だけ。
一歩、例えば東京で言う山手線の外側といったような所のサンパウロの中心街の外側は、まだまだ古い車もたくさん走っています。
こちらでの職場の同僚の皆さんも、フレックス車を買えるのは、幹部旧職員などごく一部。
一番安い車の燃料は天然ガスで、同僚の中にも、ガソリン仕様車を改造して乗っている人がいます。
環境に優しい燃料、でも、生産過程が問題・・・森林や環境破壊に結局は繋がる。
サンパウロ中心街から30分ほど郊外に向けて走れば、もうそこは果てしなく続く、サトウキビ畑。
かつては、コーヒーに沸いたところですが、今は、ところどころにコーヒー畑が残っているだけで、ほとんどがサトウキビに取って代わっている。
そして、更に、アマゾン、パンタナールそしてマタアトランチカといった植生が、サトウキビの生産のため、あるいはサトウキビに取って代わられた他の作物を植えるため、破壊されている現実が今ここにある。
日本の23倍もの広さを持つブラジル。
ここでの環境破壊は、地球規模への影響があるのは必然。
世界規模での話し合いと、その場で日本が何をすべきか、何ができるのか、今、真剣に考えなければならないと思っています。
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