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「カルタヘナ議定書」(生物の多様性に関する条約のバイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書)
なんだそれは?
そう思われる方がほとんどではないでしょうか。今年10月名古屋で開催される「生物多様性条約」の締約国会議(COP10)を知っている方ですら、この議定書のことを知っている人は少ないかもしれません。
一方、「京都議定書」なら「-6%」とピンとくるのではないでしょうか。温暖化対策にあたり、日本が6%のCO2削減に取り組む約束をしたものです。「気候変動枠組み条約」という国際的な目的を達成するために、締約国が話し合って(COP)決めた具体的な決まりごとを議定書といいます。京都で話し合われたので「京都議定書」というのです。つまり「カルタヘナ議定書」は「生物多様性条約」第2回締約国会議(COP2)がコロンビアのカルタヘナで行われ、その中で討議されたので、「カルタヘナ」という名前がついているのです。
「カルタヘナ議定書」の使命は、遺伝子組換え生物の野外での利用が、生物多様性の保全と持続可能な利用に悪影響とならないよう、適切な予防手段を講じることです。特に国境を越える移動に焦点を合わせて、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に悪影響を及ぼす可能性のある遺伝子組換え生物の安全な移送、取扱い及び利用の分野において十分な水準の保護を確保することにあります。
遺伝子組換えの食品を、家畜の次に多く食べているのが日本人といわれています。日本国内ではまだ商業用は作られていないので、遺伝子組換えの食品はすべて輸入されています。しかし、各地で遺伝子組換え汚染の植物が見られるようになりました。食用油用に輸入している菜種が港から製油工場まで運ばれている間にこぼれ落ち、自生のナタネが汚染されていたり、ついにはブロッコリーに交雑がみられたともいいます。自給率が低く、海外に食料を依存している日本にとって、この「カルタへナ議定書」は願ってもないルールになるはずなのですが、どうも様子が違うのです。
それはカルタヘナ国内法をみても日本の立場がうかがえます。まず、生物の対象がずべての生物だったはずのものが、栽培作物は対象外になっています。トレサビリティーの表示の規定もなし、リスクの低減や対処方法に力点が置かれているEU国内法とは趣きが異なり、手続き規定に力点が置かれ手います。何か起きた時も、主務大臣への届出のみで済み、秘密保持が約束されています。EUが一般大衆への通知を義務付け、輸出入者の名前・住所、何がどのように危険なのか、どのように対処するのかを秘密にしてはならないという対応とは雲泥の差になっています。一体、日本のカルタヘナ国内法は何を守ろうとしているのでしょう。
さて、とにかく今年10月名古屋で開催される生物多様性条約の締結国会議(COP10)そして、カルタヘナ議定書の締約国会議(MOP5)は注目です。
焦点は3つ。1つ目は「責任と修復」です。先にも述べましたが、遺伝子組換え作物の汚染。未然予防が原則であるものの、もし何か事件が起こったときに誰が、どのように責任をとって修復するのかと言う問題です。開発した企業(輸出者)が責任をとるのか、管理業者(輸入者)が取るのか、責任を取る能力がない場合、補充的に国家が責任を取るのかなど、整理されていないことがたくさんあります。
そして2つ目は、「遺伝資源の利用と利益配分(ABS:Access and Benefit Sharing)」。具体的な問題としては、例えばインドのニームの木の話があります。ニームの木は万病に効くといわれ現地ではミラクルニームともヨバレテイマス。この木の効能に注目したアメリカのthermo trilogy社はこの樹の遺伝子の特許を取りました。つまり、その遺伝子の恩恵を古代から受けていたにも関わらず、そこに暮す人々が利用できなくなってしまうのです。ニームに関してはインドの環境保全運動家バンダナ・シバ氏らが意義を申し立て、取り消し決定が出されました。途上国の保有する遺伝資源・伝統的知識のバイオパイラシー(生命の窃盗行為)であるという決定が初めて下されたわけですが、このような先進国の多国籍企業による行為はもはや日常茶飯事なのです。そもそも、自然の生命体に特許を与えること自体が問題だとは思いますが、そのような遺伝資源の利用と利益の配分の仕方が課題となっています。
そして、3つ目はこの条約の今後10年間の目標です。
2年前の洞爺湖サミット時ほど日本国内での盛り上がりがありませんが、10月名古屋でこの重要な会議が開催されるのです。開催までにたくさんの人々に知っていただきたい課題だと思っています。そして、今年こそ、NGOに扱下ろされることのないような日本の態度を示していただきたいと願うばかりです。
(岩田 京子)
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