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1月26日にもここで電子出版について書いたが、出版業界にとって極めて重要な動きであるのでもう一度論ずることにする。
電子出版が普及することの意味は、出版社も取次も書店も要らなくなることを意味するので、そうした業界にとっては黒船どころではない。黒船にたいして日本は自己変革のきっかけとして近代化を成し遂げたが、電子出版に対して上記の関連業界ができることはあまりない。出版社が著作権をもっている本については電子版として売る売らないの決定権があるが既に著作権の対象ではなくなったもの及び今後出る本に彼らの支配権は及ばない。
電子出版が読者とライターに与える利点を箇条書きにしてみることにする。
先ず読者にとって
一、従来の紙本より安く手に入る
一、嵩張らない、持ち運びに便利
一、本には索引があるとは限らないが、電子本なら検索機能があるので索引を使うよりはるかに使い勝手がいい。
一、絶版となった良書が続々電子版に登場するので、これまで図書館でしか読めなかった本が入手できる。
ライターにとって
一、出版社のスクリーニングを経る必要がないので書いたものを大勢の人に読んでもらえる機会が飛躍的に増える。しかも書く労力を除けば金銭的負担はない。
一、これまで紙本では難しかった極めて専門的な本を出版できる。東大出版会や有斐閣の出す専門的な本は著者が一定割合を買取ることを条件とする場合があり、著者に金銭的負担が生じる。電子版ではそれがない。
一、いつでも修正加筆が可能。紙本なら再刊する時修正するしかない。
一、印税収入のサイクルが早まる。多分1乃至2ヶ月を超えることはないだろう。出版社が左前になったり倒産すると印税が焦げ付くことがあるが、電子本は読者から直接もらうのでその心配がない。
一、紙本だと例えば原稿用紙200枚など最低のボリュームを要求されるが電子本ではそうした制約はなくなる。極論すれば原稿用紙10枚でも構わない。その分価格を下げればいいので問題はない。
社会全体にとっては返本された本を裁断処理するという資源の浪費がなくなる。
芥川賞や直木賞をめざして苦節何十年という悲喜劇もなくなる。作品として価値があるかどうかの判断は、数名の選考委員ではなく読者に委ねればよい。文学賞はなくならないかもしれないが少なくとも大手出版社が主催する意味はなくなる。
ざっと上にあげたようなところか。
これに対し出版社の編集校正機能を言い立てて自分達の存在意義を強調する人がいる。だが新刊本にはずいぶんいい加減な際物(きわもの)が多いし、誤字誤植があるのは当たり前、基本的な事実を間違えたものも珍しくない。彼らは編集校正機能などと胸を張って言う資格があるのか。
あり得る問題点
一、ディプレーではなく紙で読みたい人もいるだろう。そうした人はプリントアウトして紙で読めばいい。
一、今、年間の新刊本は6万点前後か。これが電子版になれば桁違いの点数が発行されることになるだろう。読者はその中からどうやって読みたい本を見つけるのか。少なくとも販売部数ランキングを作るのは容易だし、読者の書評もネット上で閲覧できることになる。
(紙本については今ある新聞の書評欄を参考にしている人もいるかもしれないが余り当てにならない。新聞の書評欄は、広告主である出版社へのサービスであって概ね採点が甘い。新聞社にとってお得意様の商品の悪口を書けるはずがない)
一、最も問題なのは端末の普及だろう。今は概ね3万程度だがもっと安くする必要がある。
今私は電子本として再刊したい絶版本のリストを作るというわくわくするような作業を始めたところだ。
(青木 亮)
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