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たくさんの化学肥料で育った野菜は、流行の言葉でいえば「メタボ」である。メタボが病気になりやすいのは野菜も一緒である。病気になるから薬(殺虫剤・農薬)を使う。薬を使うから土の中の微生物がいなくなり、土が枯れる。土が枯れるから化学肥料が必要になる…といった悪循環に陥りかねない。
有機農業は手間と時間をじっくりとかけて、自然の力を肌で感じながらの職人的技術を要する。1年に1回の経験を何年も積み上げていかなくてはならない。
そんな有機農業が大手の食品・医療・薬品メーカーに目をつけられている。健康ブーム・また食品にまつわる様々な事故や表示問題を経て、食に対しても安心・安全を求める人が増えてきた中で、オーガニック(有機)市場は小規模業者が次々と巨大資本の傘下に入りつつある。
国際有機農業運動連盟の世界大会がイタリアで開催された中で、ユニリーバが有機農産品の規模拡大と流通の合理化の重要性を提起した。一方、地域の小規模経営、産消提携運動、コミュニティー形成型農場の重要性と可能性が提起された。
私は農産物の世界貿易と地産地消は相反すると考える。途上国に見られる大規模な有機モノカルチャー(1つの農産物だけを生産する)は、結局、その国の人々のためではなく輸出用である。その地域の人々のためでなく、よその国の人の付加価値のための栽培は農業でなく工業に近いといえる。一方、有機農業には「地域」「小規模」「循環型」という言葉が切り離せないと思う。
埼玉県は大都会になりそびれ、田舎とも言えない中途半端なところかもしれないが、逆にいえば、「東京に近い」のに「自然がまだ残っていること」が売りだと思う。自給率は10%程度だが、田畑も多く、まだ可能性は残っている。循環型、そして有機を取り入れた付加価値をつけて「夢」のある農業を展開していくべきではないだろうか。「夢」と言ったのは、夢を持つことで若者をも引き付けることができるからだ。
若者の農業離れが益々深刻になっている中、岩手県遊佐町では若手が戻ってきている。それは、休耕田で飼料米を作り、それを地元の養豚に使うなど循環型社会をめざし様々なチャレンジを大人たちがしているからだ。チャレンジすることはとても大変なことである。リスクをも背負いながらの重労働でもある。それでも「そんな夢のある農業なら」と若者が参加し始めているのだ。農業は大変だというけれど、若者の農業離れは大変だからというだけではないのかもしれない。
「メタボ」な野菜を食べて、健康になれるのか。私はNOだと思う。高齢化が進む中、元気に歳をとることは大きな課題だ。元気な野菜が、地域の元気につながる。こんな素敵な仕事はないのではないだろうか。私たちの健康に欠かせないものを提供してくれる有機農業がこれからは非常に重要な位置を占めるだろう。病気を治す医者よりも、病気予防の有機農家!? 自然を慈しみながら、小規模でもサスティナブルで、「昔ながら」ではなく、今や「最先端」の手間と時間のかかる有機を地域で広げ、守っていきたいものだ。
(岩田 京子)
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