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警視庁は時効完成を発表すると同時に犯人はオウムだと断定した。近年これほどの警察の愚挙は見たことがない(以下警察と書くのは検察も含む)。犯人と名指しされたほうは(個人名は特定しなかったにせよ)、起訴される可能性はないのだからこの事件自体を裁判で黒白をつけることができない。せいぜい名誉毀損の民事裁判を提起するくらいしかない。
警察はそこまで確信があるのならなぜ起訴しなかったのか。その場合重大な職務怠慢の謗りを免れない。逆に大した根拠もなしにオウムと断定したのであれば公権力の不当な行使であり、一種のリンチ(私刑)であり重大な名誉毀損を構成する。いずれにしても警察の大失態である。
捜査が失敗して他人に八つ当りしているとしか見えない。
警察を監督する立場にある国家公安委員長がこの警察発表に理解を示したのも頷けない。自分の職責を弁えているのか。
オウムと言えば、15年前彼らが数々の事件を引き起こした時の捜査もひどかった。宿帳に嘘を書いたとして私文書偽造罪で逮捕、他人の駐車スペースに車を停めたとして住居侵入罪で逮捕。オウムでなければ不当な別件逮捕としていずれも大問題になるところだった。法治国家では対象によって法の執行を変えてはならない。
最近気になる捜査方法。殺人事件であるにも関わらず先ず死体遺棄事件として犯人を逮捕することが捜査の流行りとなっている。死体遺棄者と殺人者が別の行為者であることなどあり得ない。警察がこうした二段階逮捕を行うのは犯人の身柄拘束時間を稼ぎたいためである。これも適正な手続きと言えるのか疑問がある。
いい加減世間もメディアも、警察はかくも恣意的な職権行使が可能であることに気づくべきだ。こうして恣意的に職権を行使する警察に逮捕されたかどうかで、有罪無罪が確定する前に人の社会的地位は失われる。最近では厚生労働省の村木厚子さんの事件が記憶に新しい。裁判では無罪となる可能性が高いが、その場合名誉は回復されるにしても失われたキャリアが回復されることはない。
だから秘書が逮捕されたら議員は辞職すべきだとする俗論は間違いだ(小沢さんや鳩山さんに限らない。自民党議員も同じ)。そんなことをすれば警察が議員の地位を不当に奪うことができるし、警察が議員スタッフにスパイを潜り込ませ失脚を図ることもできる。これは荒唐無稽な話ではない。現に戦前日本共産党に対して警察が行ったことだ。今でも物証の乏しい選挙違反事件ではずいぶん陰湿な捜査方法をとっている。
「必殺仕置人」というテレビドラマがあった。私はあのドラマが大嫌いで一度も見たことがない。もし仕置人が掴んだ情報がガセだとしたら、更に言えば誰かを殺すために仕置人に嘘の情報を与えたとしたらどうなる? リンチの恐ろしさはここにある。
「必殺仕置人」が出たついでにドラマ「水戸黄門」のこと。このドラマもひどい。大きな嘘が少なくとも二つある。一つは江戸時代「副将軍」なる職制はなかったこと。水戸藩だけ参勤交代の義務を免れ常に江戸にいたので世人が俗に「副将軍」と言っていただけだ。助さんや格さんが「前(さき)の副将軍水戸光圀公なるぞ」と言うはずがない。そもそも御三家の中では水戸が禄高、格式とも一番低い(尾張と紀伊は大納言、水戸は中納言。黄門とは中納言のこと)
もう一つの嘘。江戸時代各藩は一個の独立国であり、幕府といえども基本的には各藩の内政に干渉しなかった。ましてや前水戸藩主というだけの立場で他藩の司法権に介入できるはずがない。
あのドラマではなぜか悪いのは各藩なら家老止まり、幕府なら老中止まりで殿様或いは将軍は決して誤ることはない。私など、もし殿様や将軍が間違ったら黄門さんはどう振舞うだろうなどと考えてしまう。このドラマも視聴率低迷で打ち切りが囁かれているのは結構なことだ。
(ジャーナリスト 青木亮)
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