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元朝日新聞記者烏賀陽弘道著「『朝日』ともあろうものが(河出文庫)」
捏造の常習化と経費の私的流用
一昨日たまたま書店で「『朝日』ともあろうものが」という本を見つけ書名に惹かれて買い一晩で読んだ。著者は元朝日の記者である烏賀陽弘道氏。書名の由来は著者がアエラ編集部にいた時よく読者からクレームの電話があり、その時の第一声が決まって「『朝日』ともあろうものが」だったから。
この本を読んで私がこれまで度々新聞を批判したことの背景を知ることができた。ほとんどの内容は「さもありなん」と首肯できたが、捏造の常習化、経費の私的流用は意外であった。
希に記事の捏造、盗用がニュースになるがあれは社外の人に指摘されて隠しようがなくなったものだけで社内限りで収めた事例は他にも相当数あったのだ。
この本に書かれた経費の私的流用のほんの一例。彼の最初の任地である三重県津支局では支局長が夫人の私的買物のために社用のタクシー券を使わせていた。東京本社時代、タクシーで帰りたいためにわざと終電まで時間をつぶす社員が多かった(昔タクシー券は使い放題だったから)。
度し難き権威主義
クラシックギタリストの村治佳織がデビュー間もない頃、その才能に惚れ込んだ著者はアエラの表紙に起用しようとする。ところが編集長以下幹部の賛同が得られずボツ。その理由といえば単に「有名でないから」。そりゃあ高校生だしまだリリースしたCDは一枚だから有名であるはずがないではないか。著者の鑑識眼より今有名か無名かを重視したわけだ。
平野啓一郎が「日蝕」で芥川賞を受賞した時アエラで取り上げた。だが「『日蝕』は妙な違和感を残す小説だ」と作品の価値判断を留保した著者のゲラを読んだ編集長が飛んできて「芥川賞作家をこんなふうに書いていいのか(もっと礼賛しなくていいのかという意味)」と苦情を述べた。
新人は察回りという奇妙な人事慣行
私は朝日に限らず「新聞記事のレベルが低いのは新卒の世間知らずに書かせるからだ」と以前書いたことがある。この著者も人事の慣例に従い刑法も刑事訴訟法も知らない新卒(しかも法学部ではない)なのに地方支局で察回りさせられた。「新卒に察回りさせるのが慣例であるのであればどうして朝日に入社前内定段階で刑法と刑事訴訟法を勉強しておくように助言してくれなかったのか」恨み言を書いている。
この著者は刑法、刑事訴訟法のみならず憲法も知らない。というのも憲法が謳っている「検閲の禁止」を間違って理解している。記者の原稿を取材対象者が公表前にチェックすることを憲法の禁止する検閲に触れると書いている。憲法が禁止する検閲とは公権力が行使するものであって、この場合憲法問題ではなくジャーナリストとしての職業倫理の問題だ。
私の過去の新聞批判
私は朝日に限らず新聞の、自分にできないことを他人に求め(例えば学歴主義、派閥政治批判)或いは他人には改革を説きながら自らの改革には抵抗する(再販制度、記者クラブ制度等)偽善性、身内の不祥事は隠し或いは小さく扱い他社の不祥事には大騒ぎする身勝手、電波の開放が求められているのに身内であるテレビ局が不当に占有している電波利権問題を取り上げない既得権擁護体質を批判してきたが朝日の腐敗がここまで進んでいるとは思わなかった。
「戦争を煽った戦前の朝日の歴史を反省します」なんてしおらしいことを言っているのは現在進行中の腐敗、堕落から目を逸らせようとする目くらましではないかという疑いが強くなった。
私の新聞批判については当電子新聞の以下の拙文(以下のテーマとクオリティ埼玉をキーワードとして入力すればヒットする)
大相撲と高校野球に見る日本社会の偽善
新聞の偽善
日本の新聞テレビはなぜつまらないか
及び私のブログ「日本の新聞の見方」から以下のエントリを参照されたし。
9月3日朝日新聞と日経新聞
11月10日今朝の朝日新聞朝刊から
11月19日尖閣ビデオ漏洩問題
尚11月10日のエントリには続きがあって記事を書いた後朝日の読者担当に電話した。電話口に出た相手(男性)は私の指摘に対し「おっしゃることはわかります」とまるで他人事(ひとごと)みたいな対応だった。こっちは手間ひまかけて電話しているんだから「ご指摘ありがとうございます」という反応を期待していたけれど。
村木冤罪事件の証拠変造事件のスクープ
先週20日土曜日朝日新聞主催の「小田原ツーデーマーチ20キロコース」に参加した。当日参加申し込みの際渡されたパック一式の中に「村木事件の証拠変造事件は朝日のスクープです」と誇らしげに書いたパンフレットが入っていた。あの件では朝日に問い質したいことがある。朝日があれを記事にした日と前田検事が逮捕された日が同じであったのは偶然とは思えない。朝日が公表する前に前田を逮捕したのでは朝日のスクープは空振りに終わる、かといって公表後逮捕まで時間をおけば検察批判が高まる。検察は朝日が公表する日を知っていたとしか思えない。それに関して談合があったのではないかとの当方の疑問に答えてくれない間はこのスクープを褒める気にはならない。
「『朝日』ともあろうものが(本書冒頭の書名)」と言う人は暗黙の中に朝日の権威を認めているわけだ。そんな読者は絶滅危惧種に指定する必要がある。
私が新聞に個人的恨みをもっていると誤解される向きもあるかもしれないが月刊文藝春秋の最近のダメさ加減も今月18日のブログに書いた。
(ジャーナリスト 青木 亮)
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