トップページ ≫ ライフ ≫ 誕生させたかった「怪人二十面相三世」
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日本の推理小説界の草分け的存在である江戸川乱歩が亡くなってから50年になる。それにともない、乱歩関連の出版や映像化が相次いでいる。ポプラ社は昨年11月から「みんなの少年探偵団」シリーズを刊行開始した。現代の作家たちが乱歩の原作を尊重しつつリライトしている。2月には乱歩の出世作「D坂の殺人事件」を窪田将治監督が映画化、没後50年を迎える7月にはフジテレビでアニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」が放送開始される。著作権の保護期間50年が今年で終わるから、今後も乱歩作品は息長く世に送り出されるだろう。
四半世紀ほど前のことだが、少年漫画週刊誌の編集部員だった私は著名漫画家から乱歩作品の漫画化の相談を持ち掛けられたことがある。アニメにもなって大ヒットし、今も人気が衰えない「ルパン三世」の作者、モンキー・パンチ氏だ。乱歩はアルセーヌ・ルパン(モーリス・ルブラン作)をモデルにして怪人二十面相を生み出したそうだから、モンキー氏が乱歩作品に興味を持ったのは自然な成り行きだったかもしれない。
双方と親しかったフリー編集者の仲介でモンキー氏と会ったのだが、初対面の席でその話が出たのには驚いた。「ルパン三世」は双葉社の「漫画アクション」で連載されたので、モンキー氏を双葉社専属のように思い込んでいたからだ。しかし、雑誌連載はそれよりさらに20年以上前の1960年代のことであり、当時は比較的手がすいていた時期だった。乱歩と深い縁のあった出版社の一員である私にこの話を持ってきたのは唐突ではなかったのだ。
モンキー氏は気さくで、人当たりもおだやかだった。新宿のバーで遅くまで話し合って、帰りの車の手配をしようとしたら、「いいですよ、まだ電車があるから」と言って西武新宿線で帰って行った。
乱歩作品をそのまま漫画にするのではなく、メカを駆使したりしてモンキー・パンチ調のアレンジを施すということだった。早速、乱歩の著作権継承者で立教大学教授だったご子息に連絡を取った。漫画化には理解を示してくれ、「企画書を見せて下さい」とのことだったので、その旨をモンキー氏に伝えた。
しかし、企画書はなかなか上がってこなかった。その場合、編集者がたたき台を作って漫画家を後押ししなければならないのかもしれない。それができなかったのは、漫画誌編集部にいたものの連載担当ではなかったので、自分がどこまで関われるか分からなかったこともある。何はともあれ、押しが足りなかったのだ。
その後しばらくしてモンキー氏と仕事で組むことになるのだが、乱歩作品漫画化は実現できなかった。これは今でも悔やんでいる。
(山田 洋)
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