トップページ ≫ 地域情報 ≫ デカケール ≫ 埼玉の妖怪② ヤナ(川越市)~霧を吹き川越城を守る妖怪~
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川越城の泥深い外堀には、いつの頃からか「ヤナ」と呼ばれる正体不明の奇妙な妖怪が住み着いていた。一説には龍や大蛇、忍びの一党の名前、個人の名前ともされるこのヤナだが、人に危害を加えることはなく、むしろ川越城が危機の時に現れて手を貸してくれた、との話が残っている。
ある戦の時、川越城が攻め込まれ敵の兵が搦め手(からめて。城の裏門)の堀端まで迫ったときのこと。急にいずことも無く深い霧が現れて川越城を包み込み、また空がにわかにかき曇って辺りは夜のように暗くなった。そして、ついには洪水を起こして寄せる敵を混乱させ、戦を勝利に導いたという。
他にも城内には伊佐沼と繋がっているとされる「霧吹きの井戸」があり、城に危機が迫ったときはこの井戸のフタを開けると、もうもうと深い霧が立ちこめて城を覆い隠してしまう、という話も伝わっている。そのため、ヤナはこの井戸に住んでいる、との説もあった。
城や民を守る独特なこの妖怪は、川越城が築かれる際に人身御共となった太田道真の娘、世禰(よね)姫の伝説があるのではないか、とする説がある。
ちなみにこの「霧吹きの井戸」は現在も残っており、川越城跡にて実物を見ることができる。霧吹きの井戸は、現在川越市立博物館前に移築されているが、かつては本丸と一郭の境、蓮池門付近にあったといわれている。
川越でシルバーガイドを務めている佐々原氏の証言によると、「霧吹きの井戸」は現在の川越武道館の東側にあったのではないかともいわれている。
また、「霧吹きの井戸」伝説と、ヤナの伝説は元々別系統の伝説が統合された可能性が高いようだ。
「埼玉の深い魅力を探る
幻想百物語埼玉 妖怪編(埼玉県広聴広報課)」より
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