文芸広場
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人生とは、七難八苦あってこそ、自己を成長させるものだ。
迷ったり、回り道をしたり、苦難を乗り越えてこそ、忠実感そして達成感溢れるゴールがあるものだとわたしは日々想っていた。
今、わたしは山にいる。
御岳山麓からケーブルカーに乗り、その後、滝を拝み、大岳山をめざす。
土曜ということで登山者は多くみられるが、日々の暖かさで紅葉はまだのようだ。
わたしの求めていた木々たちのお出迎えのもと、マイナスイオンをいっぱい吸い込み、清々しい登山を満喫、と、ここまでは順調なスタートである。
目の前にあるのは、方向を示す木の看板。
まっすぐも大岳山、左手も大岳山。どちらに行っても、大岳山にたどりつく。
ただ左手は厳しい道のようなことが書かれている。
誰一人、敷かれたレールをたどるように真っ直ぐ突き進む。
ここでわたしの人生観であるドM根性と好奇心が前面にでる。
即決即断、迷いもなく危険な道を選んだ。
途中、登山道というよりは、笹をかきわけてとおる荒れた道。クモの巣を顔面にひっかけ、嘆きながら前進。登山というより、冒険や探検といったほうが、適切かもしれない。
ここでふと、先日のニュースが頭をよぎった。
たしか・・どこかの山でクマが出没、男性が襲われたとか。思わず背筋に寒気が走る。
「森のクマさん」の曲が頭の中で流れる。
クモの巣をはらうように、思わず歌をかき消した。そんな悠長な歌を思い浮かべている場合ではない!
いくつかの標識看板を見ながら、大岳山を目指す。しばらく荒れた登山道が続いた。
また看板を見つける。矢印の示す方向に歩くが、道はない。大きな岩や倒れた大木があるだけだ。引き返し、道なき道を右往左往する。ぬかるみで足が滑る。登山道がない。付近には誰もいない。携帯の電波もない。ないないづくしだ。
サスペンスドラマにでも出てきそうな静かな荒れた山の中に茫然と立ち尽くすわたしと相棒。
判断を迫られている。苦難に立ち向かうか否か。
人生、七難八苦、突き進んで格別の達成感を手にいれるか。しかし、突き進んでもこの先に道はあるかわからない。下手すりゃ、遭難して迷惑をかけてしまう結果になるかもしれない。時間はかかるが、引き返し皆と同じ道を行くか。
珍しくあれこれと悩む、悩み抜く。そうして下した結論は、皆と同じ決められた安全な道に引き返すことだった。つまらない女だと嘆きながら・・・。
帰宅してわかったことだが、その日、青梅市内でクマが出没。
市では、近くのハイキングコースなど注意看板を掲げたそうな。引き返してよかった。
引き返したことに幾分、消化不良気味だったわたしは、はじめて安堵感に浸った。
山にハマってしまったわたしはこれからも、多くの山を登頂することだろう。
しかし、山は人生と違う。敷かれたレールをきちんといこう!そう心に刻み込んだ。
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