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文芸広場
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生しらすを求めていざ鎌倉へ。
何年か前に富士市の田子の浦港で食べた絶品の生しらす丼が忘れられなく、遠方の田子の浦ではないここ鎌倉を選んだ。
選んだもう1つの理由はおじの墓参り。一石二鳥だ。
さすが夏の鎌倉。海を楽しむ人々が海岸を埋め尽くす。
そんな海は横目でみる程度、私のお目当てはやはり生しらすのみ。
ネットで探した店に辿り着いたときは、お昼をとうに過ぎ時計の針は二時を回っていた。お腹の減りは最高潮。お店には何人かの人が待っていたのでとりあえず並んだ。
ふと予期せぬ店員の声を耳にした。「生しらすはもうありません」
なんとも哀れみのないお言葉。二時間以上かけて辿り着いたというのに。
いや落胆している場合ではない、再び生しらすを求めて次の店に足を運ぶ。
だがまたまた同じ答えが返ってくる。
諦めかけた時、生しらす丼の文字が飛び込んできた。
ここしかない、とドアを開けた瞬間、何とも言えぬ不安が押し寄せてきた。あれ、店を間違ったかな?
「生しらすありますか?」と思わず声を発した。
その問いにカウンターの板さんではなく、マスターが「はい」と答えた。
思わず安堵の笑みをもらす。
マスターに促され、カウンターに腰かけた。
落ち着いたと同時にまた不安が押し寄せた。ここで和食?どんなものがでてくるのか?
その場所は外の鎌倉の景色をかき消す異空間だ。
BGMには裕次郎なのか昭和の男性歌手の歌が流れている。
壁のいたる所には松竹や東映やら昔の映画のポスターが貼られていた。
イケメンではない、男前とか色男と言われていたころの今は亡きスター達だ。
また本棚は古ぼけた本で埋め尽くされていた。
ここはどうみてもレトロなバーだ。
何年か前までここ鎌倉に撮影所があったらしいがその関係なのか・・・。
不思議な違和感を覚えながら生しらす丼を待つ。
何となくと落ち着かない、いや落ち着くのか?
これがコーヒーやウイスキーを待つのであればしっくりくるのであろう。しかしわたしが待ち侘びているのは生しらす丼だ。
どうでもいいような葛藤を抱いていると注文した生しらす丼がマスターの声とともに目の前に置かれた。
見た目はまあまあ、まぎれもない生しらす丼だ。さてそのお味はというと・・田子の浦で食べた生しらすに負けず劣らず、絶品だった。
しかし美味しかったで、すべての疑問符が払拭されたわけではない。
この異空間での生しらす丼はいかがなものか。
落ち着くのか落ち着かないのか・・・。
まあ、それだけのインパクトを私に与えたのも事実である。
きっと次回生しらすを求めて鎌倉を訪れたときに疑問符の答えがでるだろう。
もしかしたら再び、あの扉を開けるのかもしれない。(笑)
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