文芸広場
俳句・詩・小説・エッセイ等あなたの想いや作品をお寄せください。
元禄年間のことです
長雨が続き綾瀬川の水かさが増え続けました
たまたま通り掛った六部の親子が
何時川を渡れるか心配そうに見ていました
「これは龍神のたたりだ。人柱をたてれば水は収まるぞ」
大声で叫んだ男がいました
それを聞いた村人は
六部の娘を捕まえて逆巻く水の中に放りこんでしまいました
それを見た六部の親は
娘の後を追って川に身を投げて死んでしまいました
今でも吾案橋の袂(たもと)に
六十六部の供養塔がたっています
それは三百年前の迷信深い村のお話しですが
率先して少女を生贄にした人達がいました
傍観していた人達がいました
その行為を無残に感じていた人もいたと思います
その人達は今もいます
名前と顔が違うだけです
市の職員の中に
市の著名人の中に
酔って騒ぐ人の中に
酔わずに騒ぐ人の中に皆健在です
因みに似た話は隣町にもあります
何処の街も
今も昔も同じ人間が住んでいると思います
※六部 六十六部の略称 法華経 六十六部を写経し、全国六十六か所の霊場に納めて歩いた巡礼者。仏像を入れた厨子を背負い鐘や鈴を鳴らして米銭を請け歩いた。
バックナンバー
新着ニュース
- エルメスの跡地はグッチ(2024年11月20日)
- 第31回さいたま太鼓エキスパート2024(2024年11月03日)
- 秋刀魚苦いかしょっぱいか(2024年11月08日)
- 突然の閉店に驚きの声 スイートバジル(2024年11月19日)
- すぐに遂落した玉木さんの質(2024年11月14日)
特別企画PR