文芸広場
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毎年恒例サクランボ狩りバスツアーに出掛けた。
あいにくの雨模様、梅雨時であろうとかすかな期待を抱いたものであるが、その期待を裏切り勝利を得たかのような雨の粒が私のスニーカーをことごとくぬらしていた。「雨にはかないません」と敗北宣言をし集合場所へと向かう。
今回の目的地は群馬沼田インター近くの原田農園のさくらんぼ。
さくらんぼの生産地は全国の収穫量の7割を山形県が占めているが、山形までの距離を渋り、毎年山梨へと足を運んでいた。
今年は遅い集合時間の魅力に惹かれ、さらに近い群馬の地を選んでみた。
なんせ朝の弱い私なのである。
さくらんぼの品種は約数十種類にもおよぶが一番メジャーな「佐藤錦」が私を出迎えてくれた。まるで力士のような品種は「さくさんぼ」という可愛い名前に似つかわしくないが、ナポレオンと黄玉の交配をてがけた山形県東曽根市の佐藤栄助さんの名前をとり、砂糖のように甘いという意味も込めて名づけられたようだ。
丸くぷっくらした畑の赤い宝石さくらんぼ。
待ち焦がれていた恋人に会うようなドキドキ感を味わいながらいただいた。
食した恋人は柔らかな食感はあるものの、まるで私の片思い。気持ちがさめた恋人のように甘みがなく私を失望させた。
そしてさっきまでの興奮が流れ去った私の心と脳裏には、また別の恋人を慕うかのように昨日知人から届いた「山形産佐藤錦」が姿を現す。
やはり軍配は「山形産佐藤錦関」に上がった。
午後はうっとうしい雨もあがり、少し勝利した気分に満足気な笑みを浮かべ帰路につく。帰宅後冷蔵庫の山形産佐藤錦を堪能。
浮気した私をひっそり待っていてくれていた本命の恋人のように赤く色づく柔らかな肉体がとろけるような甘さで口を満たしてくれた。
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