文芸広場
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野球の試合観戦を兼ね応援団OB会。
色々な年代が集まりあちらこちらで挨拶と現状を報告しあう。少々重ねた年齢の風格やら貫禄やら自慢の家族を紹介し久しぶりの時間を皆で楽しんだ。回を重ねるごとに懐かしく思う顔が増えていく。その一人が「今回はかみさんを連れて来たから後ろで応援している」と声をかけ後ろの応援席に姿を消して行った。
試合は大接戦。応援しているこちらも自然と力が入り、観客はどんどん団結していく。この団結こそ応援団の醍醐味!大きな声を張り上げ皆で歌い踊る。知っている人知らない人、年代性別も関係なく入り混じり同じチームを応援し、観客席が一体となる。その力がプレーする選手にも伝わり試合も強気の空気へと変わって行く。
試合は延長戦の末、さよなら勝利を納めた。入り混じったまま皆で肩を組み大きな環になって勝利の応援歌を喜び歌う。「最高の感動と団結をありがとう・・・」と、まさに勝利の女神に感謝した瞬間だ。
試合中、いつもあるはずのものがないことに気がついてしまった。
応援団と共になくてはならない吹奏楽。吹奏楽の演奏と応援団の太鼓の間を取り持つ彼のトランペットの音がなくなっていた。志半ばで亡くなったというとても残念な知らせを耳にした。吹奏楽と応援団の太鼓の音を絶妙なタイミングで引き立てる彼の繊細なトランペットが大好きだった。彼のトランペットの音はいつまでも皆の心の中で奏で続ける事だろう。
帰りがけ後ろの方に行っていた先輩が合流して来てくれた。「良い試合だったね。うちのかみさんも一緒に踊りたかっただろうな・・・」と。「勝った時は嬉しくてかみさんの写真出しちゃったよ」と恥ずかしそうに鞄の中の奥様の写真を見せてくれた。聞けば、まだ四十九日も過ぎていないということだった。「本当は家から出たくなかったんだけどかみさんが連れて行けっていうもんだから・・・」写真には、優しい勝利の女神が嬉しそうに微笑んでいた。
その晩、応援の続きの夢を見た。そこには彼のトランペットと勝利の女神も一緒だった。皆の笑顔が眩しく、また会おう・・・と約束したところで夢から覚めた。
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