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コラム …男の珈琲タイム
「男のコーヒータイム」の執筆依頼を受けた時、はっきりいって私はある種の戸惑いを覚えた。なぜなら、このコーヒータイムという響きがなんともいえない粋さと、私自身のコーヒータイムとの出会いがあまりにも懐かしいものとなっていたからだ。
私とコーヒーとの出会いは古い。日本が敗戦して間もない頃、私は両親に連れられて銀座の松坂屋に行った。今から思えばずいぶん贅沢な話だ。父の仕事の関係で占領軍の将校S氏のキャデラックに身を沈めながら、私はまだ見ぬ光景に戦々悠々としていた。敗戦が何を意味するのかすら知らなかった。戦争で敗れたとはいえ、銀座の華やかさは私にとって別世界だった。父は米軍将校S氏の運転に身をまかせながら、片言の英語をしゃべっては満足そうに笑っていた。S氏は時々バックミラーで少年になりかけていた私をみて微笑んだりしていた。
松坂屋というデパートの名は、その時初めて知った。だから当然松坂屋に入ったのもはじめてだった。ふとその時、私の目の前に大きな男が現れた。「あっ、マッカーサー元師だ!」父が言った。というより叫び声に近かった。 (つづく)
(鹿島 修太)
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