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コラム …男の珈琲タイム
ずっと以前から、横山大観という画家に興味をもっていた。
明治元年生まれの大観はれっきとした水戸藩士の子として生まれたが、その後、横山家の養子になった。私は何よりもこの高名にして偉大な画家の画風に憧れをもち続けてきた。そこにはやはり、本物の東洋が表現されているからだろうか。どこかで人間を大きく赦している画風なのだ。怒りの表現を隠さない「屈原」にしても、怒りの涯には大悲と大愚があるのだ。だから大観という名の通り、物事を大局的にみて、達感し、全てを赦している画風を自然に創り、かもしだしているのだろう。
師である岡倉天心が東京美術学校の校長の座を追われた時も最後まで師に従った。師が4升酒を飲めば、本来下戸であった大観は吐いては飲み、飲んでは吐き、自らも酒豪になり、1升酒を辞さなかったという。どこまでも人間臭いところが大観であり、日本で最初の文化勲章をもらったところも凄い。そんな大観の展覧会が横浜美術館で開催されるのを知った私は矢もたてもたまらず、横浜に出かけた。
青い海に白い帆船が停泊している。野口雨情の不朽の名作赤い靴が遠い港のはしに寂しげに主を待ち続けているような気がした。可憐な女の子の幻が浮かんでは消えた。横浜は東洋であり西洋であり世界であり、私にとっては憧れの天地だ。
海を眺める私は時には貿易商になり、時には粋なマドロスになった。海のはしに、かの馬車道が見える。江戸時代、外国人居留地と日本のかけはしになった道だ。シルクハットをかぶった外国のジェントルマンを思い浮かべると私の体は江戸時代の地球儀になってくるりとまわるのだ。私にとっての横浜は、ずっと昔から明るい幻想の都なのだ。
(鹿島 修太)
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