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コラム …男の珈琲タイム
近所のスーパーでカツオがワンパック残されていた。いきのいいお兄さんが言った。「だんな、たったひとつ残された、おっと売れ残ったカツオだけれど、まちがっちゃいけないよ!俺がこのプロの眼でみちゃ、一番油がのって鮮度も満点!値段は半分にしておくけどお買い得中のお買い得だ!」
私は反射的にそのカツオに金を払った。そして妙にこの売れ残ったカツオに愛着をおぼえた。〝売れ残ったけどうまい〟この売れ残りという言葉が心に刺さった。
昔から、残りものには福があるといわれてきたではないか。子供の時、近所のおばさんが、私たち五・六人の子供に菓子をごちそうしてくれた。みんな我先にと、菓子に手をつけたが、私は手を出しそびれてしまった。そして、最後に残ったものにそつと手を出した。「それ、それが一番うまい菓子なんだよ!アハハ!」「残りものには福があるんだよ」と、おばさんはと一人得意になって笑っていた。ずいぶん遠い日の思い出だ。
そして、私は最近になって、残りものと福ということで、晩婚の夫婦を思い出した。思い出したというより、現に私の近所で仲睦まじく生活している夫婦だ。御主人は男としての婚期をはるかに越していて、なかば結婚をあきらめていたが、そこへ年の離れた美女との縁談がふってわいた。しかし、この縁談もどうせ破談だとすねていたところ、その美女の方が彼に惚れた。美女は年こそ若いが賢い人だった。両親もこの縁談を直感的に喜んだ。
御主人の友人が彼をひやかした。
「おまえみたいな残りものにあんな美女。でもおまえは人柄もいいし、頭もいいし、むしろ奥さんに福がきたんだな。残りものには福だよな」ふっと私は、売れ残ったカツオが生き返り、大海を勇ましく泳いでいく幻をみたような気がした。
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