トップページ ≫ 教育クリエイター 秋田洋和論集 ≫ 電子書籍元年の今こそ 「これは本ではないーブック・アートの広がり」
教育クリエイター 秋田洋和論集
「本をめぐるアート」を収集の柱の一つ(1,000点を超えるコレクション)としているうらわ美術館が、収蔵作品に加えブック・オブジェの数々や中堅・若手作家のインスタレーション作品を紹介する「これは本ではないーブック・アートの広がり」を開催中している。
「ブック・アート」とは言いつつ、「これは本ではない」というタイトル通り、展示されているアートは、本がテーマではあるが本の装幀ではない。
捨てられる直前の雑誌や新聞を陶という表現手段で焼き付けたような「21世紀の記録」(三島喜美代)は、大量生産・大量消費される情報を目の前に突きつけられたような気分を感じさせてくれる。
コンテナに焼けただれた大量の本を入れた「コンテナー焼かれた言葉」(遠藤利克)は、見る者に焚書を連想させる。焼いた本が燃え尽きて灰になることなく、これほどまでに確固としたカタチを留めて存在しているという事実は大きな衝撃を与えてくれた。
そして、今回の展示で1、2を争うインパクトを持つのが、「蝶瞰図」(渡辺英司)だ。図鑑のページにある蝶が飛び立っていく様子を大規模にアレンジした空間は視覚的にも美しく、飛び立った夥しい蝶と画像を失い文字だけになった図鑑の対比も面白い。蝶の裏には言葉も書かれた状態で、あたかも蝶のカタチをした無数の小さな書籍が飛び出していくかのような印象を与えてくれた。
今回の展示は、14作家(荒木高子、遠藤利克、柏原えつとむ、河口龍夫、カン・アイラン、長沢明、西村陽平、福本浩子、三島喜美代、村岡三郎、八木一夫、吉増剛造、若林奮、渡辺英司)、約140点に及ぶ。自由自在に広がり、深化を続けるブック・アートの今を感じ取ることができるだろう。
毎日のように電子書籍をめぐる新商品・新プロジェクトの話が吹き荒れ日本における電子書籍元年という2010年の今こそ、「本ということ」を改めて考えさせてくれるタイムリーな企画展といえるのではないだろうか。
「これは本ではないーブック・アートの広がり」は、2011年1月23日まで、うらわ美術館(浦和センチュリーシティ3F)で開催。詳細は、公式ホームページ。
http://www.uam.urawa.saitama.jp/
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