トップページ ≫ 教育クリエイター 秋田洋和論集 ≫ 大正ロマンを体感 入間市西洋館 11月6日公開 石川組製糸の精神は今も息づく(当主 石川嘉彦氏)
教育クリエイター 秋田洋和論集
国道16号を八王子方面にすすむと左手に西洋館、右手にトンガリ屋根の教会が目にはいる。これは、黒須出身の実業家石川幾太郎氏、弟和助氏の実業と精神の結晶である。西洋館は当主石川嘉彦氏がすでに入間市に寄贈。現在では入間市所有で年に数回公開され、大正浪漫を体感しつつ、当時の製糸王 石川幾太郎氏のこだわりや贅の限りをつくした細かい配慮を随所に見ることができる。10月25日に公開され、つづいて11月6日午前9時から午後4時まで公開される。
西洋館の設計は東京帝大卒(現在の東京大学)の室岡惣七、建築は川越まつり山車の制作した宮大工関根平蔵。関根氏の和風工法が見事。玄関の大理石、外観の化粧煉瓦(タイル)貼、公開される数部屋だけでもゆったりした天井、調度品、照明のこだわりには見あきることがない。製糸業ならではの貴重な絹織物を使用した壁紙には浪漫と実業家としてのプライドが感じられる。当主の石川嘉彦氏。石川組製糸創業者、幾太郎氏は曽祖父にあたる。
「幾太郎には弟がおり、和助といった。和助は英語学校に学び、キリスト教を信仰するようになる。真言宗の石川家では当時大反対もあったが、幾太郎は、用地や資金を調達。それが現存する武蔵豊岡教会。また和助も幾太郎に「慈愛」を説き、経営方針に「慈愛」が盛り込まれていく。当時女工哀史という言葉があり、製糸工場で働く女性の過酷な労働は映画化までされたほど。しかし、幾太郎は慈愛の心で経営をすすめた。グンゼや片倉工業にならぶ企業にするとは並大抵の努力ではないはず。いまでは黒須団地になった場所まで広がる敷地。埼玉県だけではなく、福島、愛知、三重まで進出。農家にもいい蚕の種を提供し、いい蚕から良質な生糸を、そして極上の織物へ。幾太郎のビジネスに対する姿勢は、一言では片付けることができない。この西洋館は輸出企業として外国からの取引先のお客様をもてなす迎賓館。戦後進駐軍に接収されたもののその後は私も家族もみんなここで暮した。テレビや映画の撮影にも貸した。若い頃はブラックタイパーテイも、いい思い出。これだけのいい建物、市としてもいい管理、いい手入れ維持管理をしてほしい。そして多くの人に幾太郎の遺した西洋館を愛してほしい。」
当主石川嘉彦氏、現在は企業を経営するかたわら、ロータリー活動をされている。2007年から2008年 国際ロータリー2570地区ガバナーを務められた。関東大震災や昭和大恐慌などで石川組製糸は解散してしまうが、入間市のシンボルとしての西洋館、武蔵豊岡教会は建造物だけではなく、その石川幾太郎、和助からつづく「慈愛」「奉仕」の精神は脈々と受け継がれていく。尚、石川和助氏の姪の夫、石川求助氏が初代狭山市長であったことも特筆したい。
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