トップページ ≫ 教育クリエイター 秋田洋和論集 ≫ 「大学進学率」の変遷から「大卒の肩書の価値」を再考する(1)②いまどきの大学は本当に入りやすいのか?
教育クリエイター 秋田洋和論集
昨今の大学入試を取り巻く環境には,前述の「大学進学率」以外にもう一つ大きな変化が見られます。
それは,「私立大学に入学した学生のうち,一般入試以外の選抜方法(推薦・AO入試等)で合格した人の割合が50%を超えた」ことです。これは,特に私立大学が「一昔前のように,ひたすら勉強して激戦を勝ち抜いた人だけが入学できる場所」ではなくなりつつある傾向を示しています。
それでは,データをご覧ください。
平成23年度大学志願状況
|
募集人員 |
志願者数 |
志願倍率 |
|
国公立大学 |
100,581 |
504,174 |
5.1 |
|
私立大学全体 ※1 |
452,997 |
3,210,059 |
7.1 |
|
|
一般入試利用 ※2 |
159,337 |
1,707,631 |
10.7 |
|
センター試験利用 ※3 |
42,053 |
847,046 |
20.1 |
※1日本私立学校振興・共済事業団の調査結果 ※2※3代々木ゼミナールの調査結果
平成23年度には,国公立・私立をあわせた4年制大学への入学枠はおよそ55万人でした。うち,国公立大学は10万人ほどの募集しかなく,狭き門であることはいうまでもありません。国公立でも(医学部でさえ)推薦入試が導入されていますが,その割合は決して高くないため,入学時の難易度には大きな変化はありません。
それに対して私立大学では,募集人員総数(およそ45万人)に対して,学力による選抜(一般入試・センター試験利用)の枠はおよそ20万人しかなく,皆様が高校生だった時代に比べても選抜方法が多様化していることがおわかりいただけることでしょう。推薦・AO入試の割合の高さもさることながら注目すべきはセンター試験利用入試で,その手軽さ(センター試験を受験しておけば,実際にその大学まで足を運ばなくても合否判定してくれる)から,全体でも非常に高い倍率となっています。例えば平成23年度の明治大学では,募集人員728名に対して36,188名もの志願者(倍率は49.7倍!)を集めており,その合格ラインは難関国立大学に匹敵するとも言われているのです。
こうした入試概況の変化と大学進学率の上昇を関連付けてみると「急激に進む私立大学の2極化」傾向を見て取ることができます。「平成23年度私立大学・短期大学等入学志願動向(日本私立学校振興・共済事業団)」という資料から,私立大学への入学者に関してもう少し詳しく紹介していきます。
平成23年度私立大学合格率分布
100% |
90%台 |
80%台 |
70%台 |
60%台 |
50%台 |
50%未満 |
18校 |
126校 |
69校 |
51校 |
58校 |
56校 |
194校 |
(注)この値が100%だと「全員合格」,50%だと「倍率2倍」,20%だと「倍率5倍」を示す。
合格者数を入学定員で割って求める「大学合格率」を見てみると,この合格率が80%以上(倍率が1.2倍に満たない)の大学が213校ある一方,合格率が50%未満(倍率が2倍以上)の大学もほぼ同数の194校あり,私立大学の中でも「定員確保に苦労する大学」と「しっかり選抜が行われている大学」に2分されつつあることがわかります。
次に,入学者を入学定員で割って求める「入学定員充足率」を見てみます。これが100%を割る「定員割れ」の私立大学は223校で全体の39.0%を占めており,よく報道などで目にする「大学全入時代(えり好みしなければどこかの大学には入ることができる)」がすでに到来していることをうかがわせます。その一方,ほぼ同数の大学が110%以上の充足率を満たしており,私立大学の中でも「人気のある大学」「人気のない大学」の区分けが進んでいることがわかります。
平成23年度私立大学入学定員充足率分布
60%未満 |
60%台 |
70%台 |
80%台 |
90%台 |
100%台 |
110%以上 |
32校 |
26校 |
49校 |
56校 |
60校 |
121校 |
228校 |
誌面の都合により詳しいデータ紹介は省略しますが,大規模大学や有名大学には充足率の高いところが多く,中規模以下の大学は学生が集まりにくい傾向があるようです。また,有名大学であればあるほど「入学しにくい(倍率が高い)」傾向があることには変わりがないため,結果として「一部の有名大学に受験生が集中して,これらの大学に関しては入りやすくなっていない」「それ以外の大学は受験生が集まらないので,入学しやすくなっている」という2極化が生じていることを読み取ることができます。
こうした状況が「大学卒の肩書の価値」を変化させていることについて,もう少し詳しく触れていきたいと思います。(続く)
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