トップページ ≫ 教育クリエイター 秋田洋和論集 ≫ 「大学進学率」の変遷から「大卒の肩書の価値」を再考する(2)②すでに始まっている「大学生の選別」
教育クリエイター 秋田洋和論集
こうした情報を知った上で「大学生の就職活動」に関するニュースに触れていただくと,すでに「大学生の選別」が厳しい視点で始まっていることがわかります。そして同時に「今後必要とされる人材」のヒントも見てとれるのです。
注目すべき点は2点に絞られます。まず「優秀な女子学生の取り合い」が加熱していることです。女子学生の動向に大きな変化が起こっているのが(1)で示したとおりここ10年あまりのことですから,その変化をつかんでいない企業は優秀な人材を取り損なうことになります。その際には男女の差無く,実力に応じて仕事が与えられ評価されるシステムがあることが求められますし,出産・育児に対するフォロー体制も重視されることでしょう。かつてのような結婚→退職ではない,トータルなライフプランを提示できなければ優秀な女子学生には選んでもらえないのです。「女子学生に選ばれる企業」であることは,すでに企業が今後成長していくための一つの条件となっているともいえます。
その一方で「企業が学生を選ぶ基準」は厳しくなるばかりです。今はエントリーシートと呼ばれる書類一枚(大学名記載無しのケースも多い)で第一次審査が行われることが一般的です。私の時代では市販の履歴書に写真を貼って送ればよかったのですが,今は企業が用意したシートに志望動機から自分の性格まで,面接で聞かれるようなことを事前に書いて提出するそうです。このシートだけで落とされることも少なくないらしく,私の周辺でも「エントリーシートの書き方」といった本を読んでいる学生をみかけることがあります。私は,選抜方法が厳しくなっている原因について,もちろん景気動向の影響で採用人数が少ないこともあるのかもしれませんが,企業側が「10年前であれば大学生になれなかったレベル(この10年で増加した大学進学率10%強の枠に入っている)大学生」をまずふるいにかけているのではないかと推測します。このレベルの学生を判定するには,「字の汚さや誤字脱字」あるいは「論の組み立て方」といった部分のチェックで十分だと思われます。運よくこの審査を通過できたとしても,次に筆記試験が待っています。数学を高校1年生で捨てても大学生になれる時代ですから,こうした「自分に合わないものを切り捨てる」ことに慣れきっている学生にとっては筆記試験も高い壁になることでしょう。大学時代のみならず中学・高校時代も通して自分が経験してきたことが問われますから,大学時代によほど改心して努力していない限り,ここ数年報道でクローズアップされるような「何十社受けてもダメだった」という学生達と同様の事態を招くことでしょう。
バックナンバー
新着ニュース
- エルメスの跡地はグッチ(2024年11月20日)
- 第31回さいたま太鼓エキスパート2024(2024年11月03日)
- 秋刀魚苦いかしょっぱいか(2024年11月08日)
- 突然の閉店に驚きの声 スイートバジル(2024年11月19日)
- すぐに遂落した玉木さんの質(2024年11月14日)
特別企画PR