トップページ ≫ 教育クリエイター 秋田洋和論集 ≫ 品格ある子どもの育て方第二章 品格の「土台」を小学生のうちにどう作るか(30)
教育クリエイター 秋田洋和論集
独自に工夫させ新しい方法を試みさせる
~親の意識の持ち方としての「守・破・離」~
子どもは新しいことを身につけるにあたり、必ず身近な手本をマネすることから始めます。家庭であれば親の一挙手一投足をよく観察します。
学校や塾であれば、先生の話をよく聞いてその手法をマネしながら身につけようとします。前述のいい子とされる子どもたちの多くは、この過程において手がかからず、指導を忠実に守ります。
親や指導者の中には、少なからずいい子に対して安心感を持ち、これなら大丈夫と思ってしまう人がいるようです。しかし本当は、この段階で安心していてはいけません。忠実に守るだけではさらなる上達はありえないことを、きちんと教えなければいけないのです。
品格のある子どもを育てようと思っている場合も、同様であることはすでに書いてきた通りですから、ここでは親や指導者の意識の持ち方に注目し、「守・破・離」の考え方を紹介していきたいと思います。
ご存じの方もいると思いますが、守・破・離とは、不白流茶道開祖の川上不白(江戸時代中期~後期の茶匠)が記した『不白筆記』(1794年)に見られる言葉として知られています。修行の段階を説明する言葉として、現代でもよく使われています。さらに細かく見ていくことにしましょう。
「守」は、最初の段階です。当然ながら指導者の教えを守り、マネすることから始まります。まずは言われた通り見た通りの形から入り、1から100まで型通りに行いますが、形だけ整えたところで、「仏を作って魂入れず」になってしまうことはおわかりだと思います。ここでは作法・技法といったものだけではなく、指導者の価値観も同時にしっかり教えなければなりません。
「破」は、試行錯誤する段階です。さらなる飛躍のためには、言われたことを忠実にこなすだけでは不十分です。自身がそのことに気づき独自に工夫して、指導者の教えになかった方法を試してみることが必要になります。仏に魂を入れる段階です。
「離」は、文字通り指導者から離れる段階です。自らの新しい独自の道を確立させる最終段階のことをいいます。
子どもの成長と照らし合わせてみると、親として守と離はイメージしやすいと思います。守は幼児期のしつけや学校の勉強を、離は文字通り一人前として独立することを思い浮かべるのではないでしょうか。
それに対して、破をイメージできる親は多いとは思えません。今まで書いてきたことと重ね合わせれば、実は品格のある子どもを育てるためには、この破の部分を親も子どもも意識することが重要なのです。
守は、あくまでもしつけやマネごとであり、その部分の重要性を否定するつもりはありませんが、中学生にもなればマネごとだけでは独創性が身につくことはないことに気づく必要があります。
私は塾講師ですから、受験までの大局観の中でも毎回の授業の中でも、常にこの感覚・意識を大事にしようと考えます。簡単に言えば、「合格したければ俺を越えろ、でも簡単には越えさせないよ」というところです。
最終的には乗り越えてほしいと思いながらも、できるものならやってみろと接する、この感覚が何度か書いている「高い壁」になることの正体であり、単なる受験→合格に留まらず、自分で考える、自分で自分をコントロールするといった品格のある子どもに必要なポイントを磨くことになると信じています。
それに対して、現在の中学校では内申・観点別評価です。先生たちの言うことをよく聞くいい子でなければ成績はよくなりません。学校全体として守の部分はともかく、破の部分に気を留めているとはとうてい思えない現実があります。
勉強に限らず何の世界でも、一度自分の世界を作り上げた後にそれを壊すということはなかなかできません。守の世界がすべて、と一度思ってしまった子どもたちには破の感覚を身につけることは非常に困難になるのです。だからこそ、親や指導者の側の意識が重要になります。指導の最初の段階から破を意識できるかどうか、ここがキモなのです。
「品格ある子どもの育て方(PHP文庫) 秋田洋和著」より
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