トップページ ≫ 教育クリエイター 秋田洋和論集 ≫ 品格ある子どもの育て方第三章 「中学受験」で品格をどう身につけさせるか(33)
教育クリエイター 秋田洋和論集
自分の経験をすべて正しいと思うな
~勉強・受験における常識の変化を認める~
ネズミは、『トムとジェリー』の漫画などに見られるように一般的にチーズを好むと信じられてきました。ところが、イギリスの学者の研究で実はそうではないことがわかったと、マスコミで報じられていました。
私が小学生の頃には、夕方5時台・6時台のTV番組には「ルパン三世」「ポパイ」「トムとジェリー」の3つのうち、常にどれかが放映されていたような気がします。
偏食家で野菜をほとんど食べない私が、なぜかほうれん草だけは好物であることの理由をよく考えてみると、ポパイをネタにして親が食べさせたということは十分考えられることなのです(笑)。
子どもというのは「なぜ、どうして」を抜きにして、目の前に与えられた情報をまず真実として捉えるはずなので(疑ってかかるようなひねくれた子どもは、それはそれで問題がありますが)、その情報が間違っていた場合の修正と言うのは、実は大人になってからだと非常に難しい場合があります。
「ネズミとチーズ」の話ならせいぜい笑い話なので、実生活に影響はありませんが、これが勉強に関わる話だと状況は一変してしまいます。
自分自身が「あっ、間違いだ」と気づくならまだしも、他の人から指摘をされた場合、しかも自分自身にそれなりの成功体験がある場合には、頑としてそれを認めない人も少なくないからです。みなさんにも心あたりがありませんか?
私は小学生のとき、少年野球チームに所属していました。当時はまだ福岡ライオンズがあった頃で、所属チーム名も当然ライオンズ。神様仏様稲尾様の稲尾投手の兄が監督を務めていた、けっこう本格的なチームでした。
当時は、プレー中に水分を補給するなんて考えられないという精神論が常識とされていた時代。いわゆるスポーツ飲料が世に出る前の話です。たとえ真夏でも、のどの渇きに耐えることも練習とされ、試合途中でも水分補給はNGでした。
ただし応援に来る親や有志が、はちみつ漬けのレモンスライスをたくさん用意してくれていて、イニングの合間にはそれを頬張っていたものでした。
その発想自体が間違いとわかったのは、ずいぶん後になってからでした。この事例は、世間一般に間違いと公表されたものなので、さすがにこの私の耳まで届きました。こういうきっかけであれば、自分の経験をリセットすることも違和感なくできるわけです。
同様に、うさぎ跳びを挙げることができます。「巨人の星」の映像があまりにも強烈だったためか、当時は、練習の締めはうさぎ跳び。うさぎ跳びでダイヤモンド一周が日課で、練習後には文字通り膝が笑う毎日でした。今この時代にこのような練習を課していれば、下手すれば「体罰だ!」と大騒ぎになるかもしれません。
私たちに言わせれば「当時の練習はいったい何だったんだ!」となりますが、これこそ時代の進歩。時代とともに常識も変化していくことは、こういう事例であれば納得していただけると思います。
ところが、こういった常識の変化がなかなか認められない世界があります。それが受験・勉強の世界なのです。特に成功体験を持っているお父さんの場合、ほぼ100%自分の子どもに対して「お父さんはこうだった(だからお前もこうしろ)」というアドバイスをするわけです。私自身も常識をリセットできていなければ、おそらく同じことを子どもに要求してしまうでしょう。
「品格ある子どもの育て方(PHP文庫) 秋田洋和著」より
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