トップページ ≫ 教育クリエイター 秋田洋和論集 ≫ 品格ある子どもの育て方第三章 「中学受験」で品格をどう身につけさせるか(43)
教育クリエイター 秋田洋和論集
自由と責任をしっかり認識させる
~上のレベルを目指す向上心を植え付ける~
もう少しサッカーを題材にして話を進めます。今度は中田英寿選手を取り上げてみます。
みなさんも新聞・TVなどで中田英寿選手の引退メッセージを目にしたとは思います。実はあのメッセージの中に、私が考える品格のある子どもが必ず持ち合わせなければならない要素についてのヒントがいくつかありました。この引退表明のメッセージの中には、中田自身が
・日本代表選手個人の技術レベルは本当に高いと感じていた
・しかし自分たちの実力を100%出す術を知らなかったことを残念がっている
という部分がありました。
これは明らかに、Jリーグより上の世界に身を置いた者だけがわかる日本代表選手の弱点であり、その弱点を日本代表の他の選手たちは最後まで気づかなかったということですね。この結果わかってしまったことは、たとえ日本の中でトップであったとしても、常にその上を目指さない限り、それ以上の向上・進歩はないということです。現実に日本のトップ集団は世界ではまったく通用しなかったわけですから。
品格ある子どもの条件として、このさらに上のレベルを目指す向上心を持ち合わせていることを挙げないわけにはいきません。逆に言えば、「まぁこんなものでいいか」と日々の鍛錬に妥協する選手や受験生に、このような品格が備わるとはとうてい思えないわけです。
ところが、親に限らず教師も含めて子どもの品格について意識を持たない大人というものは、往々にして子どもの上限を勝手に決めようとしています。
例えば受験校決定の面談の際であれば、この手の親は必ずこのようなことを言い始めます。
「トップ校のビリでヒーヒー生活するよりも、1ランク下げて2番手校のトップグループに属したほうが○○ちゃんのためでございますのよ、オホホ」
実際にオホホなんて笑う人はいないわけですが、この手の親はほぼ例外なく、子どもの意向は無視して、こういうことを言うのです。そこには、
「そこまで無理して勉強しなくても」
「うちの子は常に優秀であってほしい、学年トップであり続けてほしい」
「不合格という経験をさせたくない」
という親の側の勝手な期待がその背景にあるようです。もちろん子どもは「より上を目指したい」という向上心が勉強の大きな動機になっており、親との面談の様子を話してみると、例外なく親が自分の限界のラインを引くことにはものすごく反発するのです。
スポーツであれ勉強であれ、挑戦することによってはじめて体感できる世界があります。子どもの資質や能力によって程度の差こそあれ、子どもの成長を考える上でこの向上心を意識させない選択は、マイナスにしか作用しません。
品格のある子どもを育てようとする場合には、現状に満足せず、常に上のレベルを目指す向上心を意識させ植え付ける機会を与えることを、親は意識し続けなければなりません。
意識していない場合、悪気なく、よかれと思って大人たちは、理由はどうあれ冒険させたくない、そんなリスクを負わせなくても手堅く行けばいいのよとの考えで、子どもの可能性を狭めようとしてしまうのです。
勉強でもスポーツでも、そのハードルが高ければ高いほどその途中経過は予定調和の世界にはなりません。いわゆる超難関校受験の場合であれば、どんに優秀生だって一発勝負、模試の結果通りにはなりません。高校野球でもサッカーでも、
・予定通りに勝ち進むことができるレベルは知られている
・予定通りにいかない世界では、たとえ1%でも勝つ可能性を高める努力を怠らない
ことを経験し、体得したこどもは明らかに強いと思います。目標到達までの課題はおそらく膨大になります。それを面倒と思わずひとつひとつ乗り越え、一歩でも目標に近づく経験をさせること、これは品格のある子どもを育てるための重要な条件でしょう。
「品格ある子どもの育て方(PHP文庫) 秋田洋和著」より
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