トップページ ≫ 教育クリエイター 秋田洋和論集 ≫ 品格ある子どもの育て方第三章 「中学受験」で品格をどう身につけさせるか(46)
教育クリエイター 秋田洋和論集
成長させるカギは「失敗を恐れるな」
~ 失敗を次に活かす姿勢を大人が示す~
この原因として2つの理由が考えられます。そのひとつ目は
「受身の勉強に慣れきってしまっている」
ことです。先生の指示を忠実に聞いて、その通りに動くことが、授業時間のすべてになっている生徒が非常に目立ちます。
もう少し簡単に言うと、ノートをカラフルに、きれいに作ることを勉強と思い込んでいる生徒(特に女子)が多いのです。中2にもなって関数の座標軸ひとつすらフリーハンドで書かず、丁寧に定規で書くこどもたちの多さにビックリしたことがあります。
話を聞いてみると、中1の最初に「ノートはきれいに、丁寧に、なるべく定規を使って」と言われて以来、その教えを忠実に守っているということがわかりました。
勉強でもスポーツでも、頭を使って考える、自分で手を動かして何かを発見することより、教えを忠実に守ることをいつまでも優先していたら、自分はこう考える、自分だったらこうしてみるという姿勢は育ちません。
そんな生徒たちにいきなり私が質問を投げかけてみても、長年の習慣は変えられるはずもなく、「間違えたらどうしよう」という意識が先に立ってしまうようなのです。
2つ目の理由です。この間違えたらどうしようという感覚が中学生特有の「恥」を意識するところから来るものではないということなのです。しかしながら、現実はそうではないのです。
この子どもたちの周りにいる大人(あえて先生とは書かない、親とも書かない)が「目先の結果(要するに得点)」を追い求めすぎていて、普段から、
「間違い=悪、失敗=悪」
と強く子どもたちに印象付けているのだろうな、という雰囲気が強く感じ取れるのです。これが教育現場における大問題であり、これは子どもの成長を明らかに妨げます。
失敗してもこれを次に活かそうという姿勢を大人が持たない場合、子どもには想像を超える結果に対するプレッシャーがかかることが、大人自身に理解できていないようです。
この背景として、当然、子どもの周囲にいる大人自身も、結果を出さなければならないというプレッシャーをつき付けられている(合格や勝敗であったり、生徒管理であったり)ことが予想されるのですが、結果としてそのストレスをより弱い立場の子どもたちにぶつけている構図と何ら変わらない、悲しい現実になっていることに気づかなければなりません。
数年前、とある学校と仕事をさせていただいたときのこと。この学校が新しいチャレンジとしてあるイベントを行ったのですが、運営・進行にちょっとした不手際がいくつかあったのです。
「はじめての試みに失敗はつきものだ」と私は考えるのですが、その担当者は日頃からミスを指摘され怒られているんだろうなと思わせるほど怯えた表情で、私に「ごめんなさい、恥ずかしいところをお見せして」と言ってきたのでした。
私は、「開き直りというか、もっと図太くというか、『はじめてなのだから仕方ない。この失敗を次に活かそう』という発想を持ちましょう」という返事をして、それ以上は何も触れることはありませんでした。
この担当者も教員です。自分の失敗に対してこれだけビビッているということは、おそらく教室の中で生徒に対しても失敗に対して厳しく接しているのだろうな、と容易に推察できてしまいます。「まさに『今のあなた自身が』教室での生徒の心境と同じなんですよ」と言いかけて、グッとその言葉を飲み込みました。
「品格ある子どもの育て方(PHP文庫) 秋田洋和著」より
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