トップページ ≫ 教育クリエイター 秋田洋和論集 ≫ 品格ある子どもの育て方第四章 品格を育てられる「学校と先生」の条件とは?(53)
教育クリエイター 秋田洋和論集
なんとか変わろうとする学校には期待しよう
~環境を整えると子どもはきちんと勉強する~
2006年3月27日付け読売新聞に、東京・港区の区立中学校が大手進学塾の手を借りて土曜授業を行って好評だという記事が掲載されました。その背景には、港区教育委員会が抱いた危機感が隠されていたのです。
港区では、国立や私立の中学校への進学熱が高く、区立小学校を卒業した子どもたちのうち区立中に進むのは半数に留まっています。また学校週5日制で土曜日に勉強する区立中学生は2割にすぎないという調査結果も出ていました。
そこで、学力低下を防ぎ、区立中の魅力を向上させるために4校で土曜特別講座を実施し、塾講師が先生の代わりを務めることになったのです。
実は、この記事で数学講座担当講師として紹介されているのが私自身です。
講座で使うプリントや教材は学習塾側で用意しており、「子どもたちには、50分間の授業で何かひとつ、お土産を持ち帰ってほしいと思って接している」という私のコメントも掲載されていました。
私は、2005年度には、港区立港陽中学校で授業(土曜講座)を1年間行っていました。この中学はお台場にあり、1学年20名程度しかいない小規模校です。
この人数だからということもありますが、土曜講座の出席率は非常に高いものでした。私の予想以上に真剣に勉強に取り組むし、塾の生徒以上に「感動」を表面に出してきます。1年間ではありましたが、楽しく授業をやらせてもらいました。
なぜ港区は環境を整えようとしたのか、なぜ前述した長男の中学校は勉強する場所とは言えないのか、すべては「危機感」の差ではないか、と私は考えています。
港区には、最近こそマンションの建設ラッシュで近況が変わっていますが、もともと子どもがそれほど多く住んでいません。その貴重な生徒の半数が私立・国立中に抜けていくのです。
旧態依然の学校経営では、当然私立校とは勝負にならないことは言うまでもありません。しかし、私立校と勝負することでしか生き残る術はないのです。
勝負の第一歩、それが「勉強させます」だったのです。
しかし、学校、特に先生には時間がありません。土曜日に先生が授業を行うことは不可能なのです。そこで自治体単位で塾に依頼を出したわけです。
前出の記事の中には、実は「学校に塾を入れていいのか」という意見が起こったことが書かれていたのですが、それは起こって当然です。
事実この港区の中学の中には「塾なんかに任せておけない」と、自分たちで土曜講座を実施したところもあるそうです。それでいいのです。
「対象が塾講師であってもいいから、勝負する姿勢を持つ」
これが第一歩でしょう。忙しくて毎日の雑務に追われるだけの先生に何の魅力があるでしょうか。
対象が塾講師であってもいいから、「あいつには負けないぞ」という気概や目標を持って毎日を送ること、そしてその姿勢を子どもに見せ続けることが、今先生に最も求められていることではないでしょうか。
今回の港区の取り組みが成功と言えるためには、現場が活性化したかどうかを評価基準として持たなければなりません。
子どもにも先生にも刺激があってはじめて、次の一歩を踏み出すことが出来るのです。この好循環は、品格のある子どもが育つ土壌として極めて重要な要素です。
「品格ある子どもの育て方(PHP文庫) 秋田洋和著」より
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