トップページ ≫ 教育クリエイター 秋田洋和論集 ≫ 品格ある子どもの育て方第四章 品格を育てられる「学校と先生」の条件とは?(59)
教育クリエイター 秋田洋和論集
学力低下の防止よりも学力向上を考える
~文章題の理解と式を作る力に劣る~
学生たちの教育について、十分な学力を備えていない学生たちを育てた「ゆとり世代の教育が失敗だった」という結論が世論を支配し始めています。
何をもって学力と称しているのか、という疑問はさておいて、いわゆる評論家の方々であればブツブツ文句を言うだけでも済むわけですが、私を含め公・民問わず教育に何らかの形で関わっている人の場合には、そうはいかないのです。個人的には、
・どうすれば学力低下を防げるのかを考えるよりも
・どうすれば学力が向上するのかを考える
のが現場の責務ではないかと思います。
2006年9月1日に「『計算の力』の習得に関する調査」((財)総合初等教育研究所)の結果が発表されていますので、この結果を題材にして話を進めていくことにします。
この調査結果では、小中学生は、計算はできても文章題から計算式を導き出す力は低いということでした。文章題の意味を理解し、掛け算や割り算を正しく使って式を作る力が劣ると分析しています。
「0.6メートルの青いテープと、1.5メートルの赤いテープがあります。青いテープの長さは、赤いテープの長さの何倍でしょう」という問題の正答率は、小学5年で47.1%。計算式を作ることができたのは51.2%。
「6リットルは、何リットルの1.2倍か」という問題では、「6×1.2」「1.2×6」「6÷1.2」「1.2÷6」の4つの選択肢から解答を選ぶのにもかかわらず、正答の「6÷1.2」を選んだのは、小5で50.3%、中学生でも65.4%ということでした。
テープの問題の正答率が小5で47.1%ということは、計算式ウンヌン以前の問題ということです。小学生の場合、私もそうだったのですが、とりあえず答えが浮かんで、後付けで理由や式を考えるということがあってもよいからです。計算式先にありきの考え方自体が問題だと考えます。例えば、
「6リットルは、何リットルの1.2倍か」で4つの選択肢から解答を選ぶという問題であれば、とりあえず5リットルという答えが浮かぶことが優先で、どのような計算をしたかなんて後からでいいわけです。私だったら、選択肢の中で答えが5になるものを選ぶでしょうね。
1.2倍の概念の根本は、□×1.2=6であって、これを選択肢に入れないこと自体おかしいと思います。「6÷1.2」があるでしょ、という意見があるのは当然ですが、これは変形させた結果であって、多くの子どもは「結局割り算すればいいのね」という結果主義に陥ることが多いのです。
だから、割り算というキーワードだけが頭に残っていて、「あれぇ、6はどっちだっけ」とか「自分が出した答えの吟味ができない」ということになってしまうわけです。
同じ悩むのであれば、
□×1.2=6
10×1.2=12
だから「□には何が入るのかな?」と悩んでほしいわけです。
「品格ある子どもの育て方(PHP文庫) 秋田洋和著」より
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