トップページ ≫ 教育クリエイター 秋田洋和論集 ≫ 品格ある子どもの育て方第四章 品格を育てられる「学校と先生」の条件とは?(65)
教育クリエイター 秋田洋和論集
大学生に欠ける目的意識と「無形の力」
~目標も心構えも希薄な学力不足の大学生~
前項でも述べた首都圏の大規模停電の事故にしろ、最近世の中でありえない事故・ミスが多発していることも、私は「無形の力」と関係があると考えています。
無形の力という言葉は、東北楽天の野村監督等もキャッチフレーズによく使ったりしています。こと教育に関して考えると、非常に使い勝手がよく、イメージがつきやすい言葉です。
これは、「有形の力」にあたるものが普段イメージする学力、つまりペーパーテストの得点といったものを容易に連想させるからでしょう。
それに対して、教育での無形の力は、
・イメージがつきやすいものであるにもかかわらず
・意識することが難しい
ものであると感じられます。普段、教育現場でどれほど意識されているのか、もしかすると1度も意識することなく大学生になってしまう学生がいるのではないかというほどです。
大学生の学力不足が深刻になっていることを報じる新聞記事を見つけました。記事によると、最近は、学力不足の新入生を対象に、入学前に中高生レベルの学力をつけさせるリメディアル(補習)教育をする大学が増えているようです。
教科は英語や数学が中心ですが、論文が書けない学生が多いため、日本語表現を最重点に挙げる大学も多いとしています。取り組みの背景には、入試制度の多様化があります。AO入試(書類審査や面接など総合的に評価する制度)や推薦入試を通った学生の中には、それ以外の教科が中学レベルで留まっている学生もいるからです。
かつて学生向け公務員講座を開講していた大学の話を聞いたことがあります。私にもこの手の講師として声がかかり、とりあえず話を聞いてみたのです。しかし私はその話にのりませんでした。ちゅうちょした理由というのが、大学の現状をはっきり教えられたからです。次のようなことがわかりました。
受講する大学生の姿勢が悪いことが、まず挙げられます。姿勢には2つの意味があって、ひとつは文字通りの姿勢。きちんと座っていられないレベルの学生も多いようです。さすがに立ち歩きはないが、とにかく勉強が続かない。
もうひとつは、講座を受講するにあたっての姿勢(心構え)です。
・なぜこの講座を受講するのか
・この講座から何を得ようとするのか
が希薄なことです。いまだにイヤなものから逃げ回り、現実逃避しようとする学生も多いらしいのです。
私には、目的意識が希薄である学生を相手にしている暇はありません。私自身の大学時代を振り返ってみると、正直まじめに勉強してはいないし、おそらく姿勢も悪かったでしょう。
しかし、土壇場の場面では、やるときはやる姿勢を持っていたし、自分の周りの人間もそうでした。つまり、一般的に大学生とは、やるときはやる、だけどギリギリまでやらない(笑)人間の集まりではないかと、私は考えているのです。
もちろん学力的に問題があるからやる気が起きない、という言い分はあるでしょう。しかし、みなさんご存知だと思いますが、例えば公務員試験の数学では、小中学生の内容、それも易しい中学受験問題や公立高校入試問題レベルが大半を占めるのです。
そのレベルの課題から逃げるというのは、明確な目標より感情が優先してしまう、つまり大人ではないということではないでしょうか。20歳を過ぎて無理やり受講させられている学生なんているはずない(と思う)。
一度自分が立てた目標をなぜそれほど簡単に放棄してしまうことができるのか、それが無形の力を得てこなかったことに起因しているのではないかと考えるのです。
「品格ある子どもの育て方(PHP文庫) 秋田洋和著」より
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