トップページ ≫ 教育クリエイター 秋田洋和論集 ≫ 子どもたちが「地球温暖化問題」を実感できない理由
教育クリエイター 秋田洋和論集
エコカー減税にエコポイントなど、最近「エコ」という言葉を耳にする機会が増えてきました。大人が率先してエコを意識しないと、子どもたちに意識が根付くはずがありません。この夏休みを利用して、ご家庭でできるエコについて話し合ってみるのもいいかもしれません。
そんな中、エコ意識なんて考えている暇がないほど忙しいのが受験生とその家族、そして塾業界です。
「夏休みを制する者は受験を制す」という言葉の通り、この夏休みの勉強(量・質ともに)が2学期以降の成績を大きく左右することは間違いありません。中学受験・高校受験・大学受験を問わず、この時期であれば「最低でも1日10時間」の勉強量確保が標準的ですから、日中の暑い時間帯にどれだけ効率よく勉強できるかどうかが勝負を分けると言っても言い過ぎではありません。
我々の父親の世代であれば水の入ったバケツの中に足を入れながら勉強し続けたようですが、現在では自分の勉強部屋にエアコンが入っていることも珍しくありません。朝から快適な環境の自室で勉強し、外出するのは塾へ行く時だけという受験生も多いようです。自室にエアコンが無い場合には、午前中から塾で自習し、途中塾の授業をはさんで夜10時頃までまた勉強するといった生活パターンの受験生もいます。多くの塾では自習室が用意されていますから、上手に利用すれば同じ月謝でありながらその何倍も使いこなすことができるのです。
この時期、1日中室内にいるのは受験生だけではなく塾講師も同様です。特に夏期講習・冬期講習の期間中は、例え授業は午後や夜だったとしても、授業準備や質問対応のために午前中から校舎に入ることが多くなります。授業終了後も同様に質問対応を受けていると、結果的に「朝から晩まで」校舎の中で過ごすことになりますから、講習が始まって数日もすれば、曜日の感覚も・昼夜の感覚も・日々の天気も・・・わからなくなってしまいます特に「暑い・寒い」の感覚に対しては、かなり鈍感になってしまいます。夏はエアコンがギンギンに効いた部屋で長時間の授業です。エアコンを弱めて「暑い」という感覚を与えてしまうと、「あの塾は勉強に適した環境を提供しない」という言い訳を与えてしまうことになるので、授業する側も座っている側も「寒い」と感じるくらいの温度の中に1日中いることも珍しくありません。冷気が直撃する席に座ることになる生徒の中には「長袖」を持参する者も少なくないのです。逆に冬は「暖房+熱気」で暑いくらいの部屋になるので、授業をする側は汗だくになります。季節はずれの冷房をかけようかと思うこともあるくらいの温度の中で、生徒達も汗を拭き拭き勉強しているのです。各部屋がこの状態ということは、校舎全体で考えると朝8時過ぎから夜10時くらいまで連日エアコンがフル回転していることになります。塾って、本当に「地球環境に優しくない業種」ですね。そんな塾が理科や社会の授業では「地球温暖化」をはじめとする環境問題を扱っているのです。
よく考えると変な話ですね。
私は10数年にわたって塾講師を続けてきました。入試時期には「入試応援」のため早朝出かけていていましたが、特に21世紀になってから急激に年々「暖かくなっている」という実感がありました。昔ほど着込んで出かける必要がなくなったのは事実ですし、「足先に貼るカイロ」が必要なくなりました。 90年代には雪の中でガチガチ震えながら生徒を待つことも多かったのですが、そんなこともめっきり少なくなりました。
振り返ってみると、確かに「地球温暖化」は自分たちの足元まで来ているようです。ところが、塾はもちろん学校でもエアコンが設置されているこのご時勢、子どもたちは「空調の効いた部屋」で環境問題を学んでいるのです。北極の氷が溶けようが、地球の平均気温が上昇しようが、日常生活に影響を感じることが出来なければ、彼らはバーチャル感覚で勉強しているような気がしてならないのです。
~秋田洋和~
清和大学法学研究所客員研究員。
私立中学や学習塾への教育コンサルタントとしても活躍。
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