トップページ ≫ 教育クリエイター 秋田洋和論集 ≫ 品格ある子どもの育て方第四章 品格を育てられる「学校と先生」の条件とは?(66)
教育クリエイター 秋田洋和論集
大学生に欠ける目的意識と「無形の力」
~「ちょっと待てよ」と立ち止まる大切さ~
少なくとも中学受験生、難関高校受験生に関して言うと、やみくもに勉強すれば成績が上がるというものではありません。そこには戦略とも言うべき視点が存在します。それは、
「課題発見→点検・解決→次の課題発見の流れに基づく自己分析」
とも言うべき視点です。
こうした受験生は、
・合格するにはどうすればよいのか
・そこから逆算して、今の自分の課題を発見する
という作業を、否応なく日々考えるようになります。受験間際になっても親からその日の課題を指示されているようでは……という感じで、ある時期からは自分で課題を発見できるようにならないと土壇場での成績向上は望めません。
・こうした自己分析もしくは目的意識を持つ経験の積み重ねによって
・数学で言えば答えを吟味する(点検する)習慣が自然と身につく
のです。答えを出しっぱなしの人との差が大きいことは言うまでもありません。
この「ちょっと待てよ」と立ち止まること、これこそが無形の力なのではないでしょうか。前にも書いた、
0.6=1.5×○
の計算の時に、○は1より小さいことをイメージしている子と、割り算割り算で頭がいっぱいになっている子、どちらも同じ式を見て同じ問題を解いているように見えます。
しかしその思考過程はまったく違うし、何よりその違いはちょっとした日々の積み重ねだったり、接している大人のレベルによって生じてくるものなのです。
「はい、これは割り算です」と言い放つ大人に接している子どもからは、ちょっとした違う視点は育ちません。「割り算しなさい、と言われた通りに計算したから、オレはもう悪くないよ」くらいのことを言う子どもが育ちそうな勢いです。
とにかく、結果を出すことのみにとらわれて、
・「ちょっと待て」と点検してみる
・「もしかすると……」と仮説を立てる
といった経験を十分に積んでいない(と思われる)子どもたちが、すでに大学生になり大人になっているはずです。
これは「計算したら答えを見直しましょう、ハーイ」のレベルではなく、もっともっと深いレベルでの経験と考えてほしいところですが。最近の世の中で、ありえない低いレベルでの事故・ミスが多発するのも、この部分の経験不足からくる危機管理能力の低さが要因なのではないでしょうか。
株の誤発注とかエレベーターとか停電とか、「ちょっと考えればわかるだろ」というミスが多すぎます。しかも、後から修正が効かない重大なレベルでのミスなのです。そのレベルであれば、本当に大丈夫かと一度立ち止まって点検するのが普通だと思うのですが、現在は普通とは言えないようですね。
「品格ある子どもの育て方(PHP文庫) 秋田洋和より
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