トップページ ≫ 教育クリエイター 秋田洋和論集 ≫ 私立高校の個別相談会がヤマ場を迎えます
教育クリエイター 秋田洋和論集
中学3年生のお子様をお持ちの保護者の皆様は,夏以降「合同説明会」「学校説明会」「個別相談会」など,毎週のように学校や塾主催で行われるこうしたイベントに足を運び,そろそろ疲労困憊の頃ではないでしょうか。この時点で「私立高校の個別相談は完了した」という人はかなり幸せで,多くの保護者(受験生)にとっては,これからの半月(特にクリスマス前後)で行われる最終の個別相談会に臨むことになります。現実問題として,10月・11月と相談会に参加はしたものの,長い時間待たされたあげくに「資料が揃ってからもう一度来てくださいね」と言われた人は,皆さんの周りにも多くいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は,受験生の保護者を悩ませる「個別相談」について,
http://www.qualitysaitama.com/?p=672
の続編を紹介していきたいと思います。
○12月の個別相談会は「最後の天王山」
12月も中旬になると,私立高校に提出する「内申」の数値が確定し,12月の北辰テストの結果が戻ってきます。高校側は受験生を評価する数値の資料が出揃ったことになりますから,これでようやく「最終評価」を下すことができるのです。逆に受験生や保護者の立場から見ると,9月や10月の結果が悪かったとしても12月の結果まで待ってもらえれば,まだチャンスがあると前向きに考えることができます。ちょっと具体的な事例を紹介してみましょう(もちろん架空の話です)。
①県内の私立A高校・・・11月の説明会で「基準」としてこんな数値を発表した。
「特進クラス:偏差値62 一般クラス:偏差値56 いずれも9月以降の北辰テストの3科・5科いずれかの数値のうち,良い回2回の平均です」
②9月以降,毎月北辰テストを受験してきたTさんは,11月の結果までの結果は以下の通りだった。
Tさんは,A高校の特進クラスを目指している。
|
3科偏差 |
5科偏差 |
9月 |
57.4 |
59.6 |
10月 |
61.2 |
62.8 |
11月 |
58.4 |
59.2 |
12月 |
|
|
【表の見方】
○平均の算出では,「3科なら3科,5科なら5科」と揃えた数値を見る。9月は3科,10月は5科といった数字の拾い方はできない。
○11月までの結果を見ると,3科の場合は10月と11月の偏差値の平均「59.8」が持ち点となり,5科の場合には9月と10月の平均「61.2」が持ち点となる。
この結果を持って個別相談会に参加したTさんは,学校から「12月の北辰で頑張ってくださいね。12月に5科で61.2の偏差値を取れば,2回の平均が62に達しますから基準をクリアしますよ。12月の結果に関わらず,もう一度相談に来てください。」と言われました。この学校では,説明会に参加した生徒に「登録カード」を配布しており,Tさんも9月の説明会の段階で登録を済ませていました。A高校の先生は,Tさんの登録番号と北辰の結果をチェックして相談を終了しました。
Tさんは,12月上旬に受験した北辰テストの結果が返ってくるのを待って,12月24~26日に行われる最終の個別相談会に参加するつもりです。
○基準クリアは「合格」ではない
12月の北辰で,Tさんは3科偏差値60.3,5科偏差値で62.4を取り,無事にA高校特進クラスの基準に到達しました。
通っている塾に報告に行ったところ,「ちょっと基準の落ちるB高校も受験するほうがよい」と意外なことを言われました。実は以前から,塾の面談では「A高校はギリギリの成績なので,ちょっと基準の落ちるB高校の個別相談にも参加するように」と言われていました。Tさんは,12月の結果が良かったので「もうB高校は受けなくていいかな」とお母さんと話していたところだったのです。疑問に思ったTさん親子は,機会を改めて塾の先生に相談を持ちかけたところ,塾の先生はこんな事を言ってくれました。
③学校側が提示した偏差値をクリアしたとしても,これは「合格」ということではない。当日の点数が悪ければ,当然不合格ということも考えられる。
④一般に偏差値が60以上の高校の場合,本番の入試問題は「公立の問題より難しい」ことが多く,特に特進クラスでは,英語の長文や数学の応用問題などは高校レベルの出題も珍しくない。試験科目は「英・数・国」の3科であるため,3科に限ったレベルについては,その学校が提示した基準よりも少し高く見積もっておく必要がある。
⑤Tさんは,3科より5科の偏差値のほうがいつも高い。これは「理・社」が成績を引っ張ってくれたおかげで基準をクリアしたと考えるべきであって,3科に絞った場合には現在の実力と比較して「確実に合格ラインに到達できる」とは断言できない。
塾との面談が終わって,TさんはB高校も受験することに決めました。クリスマスの頃には,A高校とB高校の個別相談会に参加して,高校側の最終判断を仰ぐことになるのです。
この個別相談制度は,「どこか1校は確実に合格がほしい」と考える保護者や受験生にとっては決して悪い制度ではありません。しかし,レベルが高いといわれる高校になればなるほど「事前に合格を匂わせて,受験生が気を抜いてしまう」ことを嫌がります。やはり勉強では「最後の追い込み」で逆転することもあり,この経験を持っていてくれないと,当然ながら「3年後の大学受験」の際にモチベーションを維持することが困難になると考えられるからです。基準をクリアしたからといっても気を抜かず,年末年始には「人生の中で一番勉強した」と言えるくらい集中して最後の点検に臨むことが大切です。
~秋田洋和~
清和大学法学研究所客員研究員。
私立中学や学習塾への教育コンサルタントとしても活躍。
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