全国各地で成人式が行われた1月１０日（日），埼玉の私立中学入試が始まりました。最も長い受験日程だと，今日から始まって長２月上旬（都内私立中の解禁日は２月１日）まで，不安と緊張の中で受験と調整を繰り返すことになります。中学入試は１２歳の勝負。どんなに大人びていたとしても，やはり１２歳なのです。模試の結果通りにはならないことも少なくありません。それがわかっているからこそ，受験生本人も保護者も一層の不安と緊張に包まれるわけですね。

　受験生の皆さんにメッセージを贈ります。

　～本当に合格できるのかどうか，あとどのくらいで合格できるのか。この距離感は，残念ながら誰にもわからない。今わかることは，入試５分前であっても「合格へ１歩でも近づくことはできる」ということだ。もしかするとすでに合格ラインを越えているかもしれないし，全くダメかもしれない。でも，今さらそんなことを悩んでも仕方がない。「合格へ１歩でも近づくぞ！」という気持ちで開き直ってチャレンジするしかない。それが受験だ。～　　　皆さんの健闘を祈ります。

○埼玉も例外ではない中学入試ブーム

　さて，少子化もリーマンショックも関係なく首都圏の中学受験率は上昇を続けています。０９年春，首都圏（１都３県）の中学受験率は17.8％（四谷大塚調べ）といわれており，計算上６人に１人以上の割合で受験をしていることになります。また，併願校数は平均で5.81校という結果が出ており，最も受験者が多くなる２月１日（月）には，埼玉の小学校でも多くの欠席者が出ることが予想されます。

　埼玉においても受験率は急激に伸びているものと思われます。次の表をご覧下さい。

埼玉県内の主な私立中学校開校年度（1990年以降）

　埼玉においては，2000年頃を境に中学入試に対する感覚が，都市部を中心に変わってきていると思われます。それまでの中学入試は「都内私立中への進学」を考える家庭がチャレンジするものであり，まだ埼玉においては「珍しい」ものでした。それが2000年頃から始まった「埼玉の私立中学開校ラッシュ」によって，また「公立中のカリキュラム削減に伴う学力低下への不安」が後押しする形をとってしまったため，公立中学との対比で県内の私立中学への進学を希望する人も年々多くなっていると思われます。90年代前半くらいまでに子育てを終了された方にとっては，ちょっと想像できない世界になっているかもしれません。そのくらい，この10年弱の間に埼玉の教育環境は大きく変わりつつあるのです。

○中学入試と成人式

　今年成人式を迎えた世代は，平成元年（1989年）４月～平成２年(1990年)３月に生まれた世代です。彼らが新中１を迎えたのが2002年ですから，そろそろ「中学入試経験者」の比率が高くなり始める世代です。そんなことを考えていると，「彼らは成人式でスーパーアリーナのどこに座るのだろうか？」という疑問が湧きました。「さいたま市は出身中学別にスーパーアリーナの座席を指定している」という記憶があったからです。

調べてみると，現在は座席指定をしていないようです。そうはいっても実際には中学ごとに固まっているケースが多いのでしょうが，制度として座席指定をされてしまうと，私立中学出身者にとっては困った話しになります。

「成人式では出身中学別に集まって座る」という自治体もまだまだ多いようですが，それでは対応できなくなってしまう日が来るのは，それほど遠くない未来だと私は思います。

　～秋田洋和～

清和大学法学研究所客員研究員。

私立中学や学習塾への教育コンサルタントとしても活躍。