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教育クリエイター 秋田洋和論集
誤用される例
禅譲
帝王が位をわが子に継がせず、もっともふさわしい有徳者にその地位を譲ることを言う。昨年のニュースにあったが小泉元首相が自分の選挙区を「次男に禅譲(産経新聞)」と言うのは間違い。「次男に世襲」と言うべし。
無実と無辜
新聞で時々見かけるが「アフガニスタンで米軍の誤爆によって大勢の『無実の人』が殺された」という言い方は間違い。「無実の人」とは刑事事件の被疑者或いは被告人となっていたが実は犯人ではなかったという意味。この場合刑事事件とはなんの関係もないのだから正しくは「罪もない人」或いは「無辜(むこ)」と言うべし。
これに関連して。「民間人の死者」という言い方もおかしい。公務員はいくら殺しても構わないと聞こえる。それを言うなら「一般市民」又は「非戦闘員」だろう。
妙齢 芳紀
間違って年かさの人に使用されていることが多い。本来妙齢と芳紀は十八九から二十歳そこそこまでの女性を言う。それを過ぎたら年増。従っていいおばさんにこれを使うのは間違い。或いはお世辞のつもりか。もっとも今時二十歳過ぎの人に年増と言ったら怒られること必定。
ていたらく
不祥事が露見した東横イン社長の反省の弁。「本当に体たらくな自分だったと思います」この人は「ていたらく」を「だめな」という意味で使っているが間違っている。そもそも「ていたらく」単独では意味をなさず、一個の独立した形容詞のような使い方はできない。 今では悪い意味での「ざま(例:なんたるざまだ)」と同じ意味でしか使われていないが、元は悪い意味はなくて「富士山のていたらく(富士山のようす、かたち)」という言い方もあったくらい。社長がこんなていたらくだから会社がダメになる。
耳障り(みみざわり)
「目障り(めざわり)」と同じで「耳に障る」、「聞いて不快な」という悪い意味。したがって「耳障りがいい」という言い方はナンセンス。言っている本人は「耳触り」のつもりかもしれないがそんな日本語はない。だからこれは「聞こえはいいが」とか「一見もっともらしいが」とでも言うべし。耳障りと言えば「なになにしてございます」という言い方は耳障りだ。「なになにしています」で十分。
須く(すべからく)
この誤用もよく見かける。なまじ学のある人が間違えている。「須く~すべし」で単に「~しなければならない」という意味。「須く」自体は意味がない。なくても意味は変わらない。「常に」とか「全体的に」という意味はない。漢文読み下し時代からの慣用的な読み方だが意味はない。
嘗て(かつて)
「嘗て」は副詞だから「嘗てのように」とか「嘗ては」などと名詞的な使い方はできない。単に「嘗て」でいい。時々「かって」と言う人があるが、「かつて」が正しい。
足の踏み場もない
新聞記事で人が多いのを表すのに使っていた。これは物が散らかっている様子を表す言葉。人が多いさまは「立錐の余地もない」でないといけない。
賞味
称賛しながら味わうという意味。だから客に対し「ご賞味ください」とは使えない。
またぞろ
後に続くのは悪いことであって、いいことには使わない。「またぞろしくじった」など。
檄(激ではない)
檄とはわが方に加勢するように促す書簡のこと。だから連敗中のチームの監督が「選手に檄を飛ばした」は間違い。正しくは「焼きを入れる」或いは「喝を入れる」など。
「関ヶ原の前家康は江戸城にあって全国の諸将に檄文を発した」これが正しい用法。電話、メール、ファックスもある現在「檄」は死語にすべきだろう。
玄人裸足(くろうとはだし)
玄人も裸足で逃げ出すほど勝れていること。素人(しろうと)裸足と誤用する人がある。
情けは人のためならず
「他人に親切にすれば回り回って自分にいいことがある」という意味であって、「情けをかけるとその人をスポイルする」という意味ではない。
小春日和
小春とは陰暦十月のこと。春ではない。その時期めったにない暖かい日和のこと。五月晴も同様で、これは陰暦五月今の梅雨時だから「めったにない晴れの日」のこと。
ついでに。正月に新春とか初春(はつはる)と言うのは陰暦の感覚を今も惰性で使っているのである。新暦では冬の最中である。
遺憾
単に残念という意味。謝罪の意味はないので政治家にだまされないように。中国語では単に「残念」の意味でよく使われる。
逆の意味に誤用される例
気が置けない
気づまりでない、気遣いのいらない、リラックスできるという意味。まったく逆の意味に理解している人がある。
流れに棹さす
時流時勢に迎合すること。先日テレビで佐高信さんが逆の意味に誤用した。
役不足
能力に比べて役が軽過ぎる、もっと重い任務がふさわしいという意味なのに謙遜のつもりで使う人がいる。それを言うのであれば「自分には役が重すぎる」とか「身に余る大役」と言うべし。他人に対するお世辞としては使える。これを間違うと偉い人の前で大恥をかくことになる。
天地無用
運送業界の用語で上下逆さまにしてはいけないという意味。上下どっちでも構わないと思っている人は運送業には向かない。「無用」は不必要と禁止の二つの用法があるので要注意。
ジンクス
縁起の悪いもの、不吉なものという意味。いいことには使えない。
間違えやすい読み
順風満帆(まんぱん)
読み方は「じゅんぷうまんぱん」。これをTBSラジオ「アクセス」で田中康夫さんが「じゅんぷうまんぽ」と言っていた。
人間(じんかん)至る処青山(せいざん)あり
読みは「じんかんいたるところせいざんあり」。この人間とは人ではなく世の中。
侃侃諤諤と喧喧囂囂
読み方はそれぞれ「かんかんがくがく」と「けんけんごうごう」。これをごっちゃに使う人がときどきいる。
(ジャーナリスト 青木 亮)
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