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教育クリエイター 秋田洋和論集
今年ガラパゴス携帯という言葉が流行ったが、日本プロ野球も独自の進化を遂げたように見える。だがその日本プロ野球も横浜の身売り騒動、日本シリーズが一部地上波で放送されなかったことなどを見るに付け転機を迎えつつあるように見える。
アメリカ大リーグとの違い
アメリカ大リーグには企業名をつけた球団は一つもなく(企業ではなく個人オーナーが多いため)しかも名称は創立以来変わっておらず当然ながら本拠地も変わっていない。だが日本では特にパ・リーグはすべて企業名を冠ししかも創立以来同一名称を保っている球団は一つもない。名称が変わると同時に本拠地をも変わることが多い。日本で企業名を冠していないのは横浜ベイスターズだけ。巨人、広島も企業名を冠していないとおっしゃる方があるかもしれないがそれぞれチーム名称は読売ジャイアンツと広島東洋カープ。
その理由。アメリカではプロ野球自体ビジネスとして成立つ(テレビの放映権料が大きい)のに反し日本ではセ・リーグの二三の球団を除き赤字であるので企業の広告宣伝手段として使えなければ球団経営の意味はないと経営者は考えるからである。巨人以外はテレビの放映権料がわずかで入場料収入が大部分を占めているから自ずと赤字にならざるを得ない。しかもフリーエージェント制度の導入以来選手の年俸は高騰したので赤字幅は拡大している。貨幣価値の変動があるとしても長島、王でさえ選手時代年俸が億を越えることはなかったが今では各球団の1億円プレーヤーは五指に余るほどだし巨人阪神に至っては十指に余るほどだ。
ポスティングシステムの魅力
こうした情況の中、日本プロ野球にとって大リーグのポスティングシステムは麻薬のような魅力をもっている。この制度によってオリックス、西武はイチロー、松坂を放出した時それぞれ落札金15億円、60億円を手中にしている。この時オリックスは年間経費を賄って尚おつりがあった。西武に至っては言わずもがな。さきほど麻薬と言ったのはスター選手の流出によるファン離れという副作用も大きいからである。
今秋楽天の岩隈が大リーグを志望した時、球団社長が「永年のチームへの功績に鑑み彼の希望を認めることにした」などとお為ごかしを言っていたが、内心はいい商売ができたとほくそ笑んでいるに決まっている。落札金額は今のところ公表されていないがイチローの15億円に近い金額であったと推定されている。
大リーグに選手を売ることによって赤字を補填するのが日本プロ野球の新しいビジネスモデルとなりつつある。但しフリーエージェント権を行使した移籍の場合球団には一円も入らない。松井と巨人が疎遠になったのもそうした経緯があるからである。
横浜の身売り問題
住生活グループとの身売り話は結局破談に終わった。毎年20億円もの赤字を垂れ流す事業を有償(60億円前後?)で買うのはビジネスの常道に反する。赤字の事業ならタダでも高いくらいだ。だがそこにプロ野球という事業の特殊性がある。プロ野球経営は既存球団を買収しない限り新規参入できないという特殊なビジネスである。この既得権をどれだけ評価するかが問題だ。だから住生活グループのように大金をはたいて買う企業があってもおかしくはない。今回破談に至ったのも金額以外の条件(本拠地移転)が折り合なかったからである。
日本シリーズが一部地上波で放映されなかった問題
これはプロ野球日本シリーズが昔ほどテレビにとって魅力あるコンテンツでなくなったことを意味する。この対策としては従来の慣行を止めて放映権を入札制度で売却する、デーゲームに戻す、この二つを併用すれば解決できるだろう。
12球団がすべて優勝を目指してわけではない
一部の熱狂的ファンには水を指すようで申し訳ないが12球団がすべて優勝を目指しているわけではない。ゴルフ、テニス等のプロスポーツと違ってプロ野球では順位と球団の収入とは直接相関関係はない。順位がどうあれ球団の収入は基本的に入場料とテレビ放映権料が大部分を占める。ところが優勝すれば選手は大幅な年俸アップを当てにするので更改交渉でモメることが多い。だから負け過ぎてファンに見捨てられるのは困るがほどほどに勝ってくれればいい、優勝争いをしてくれるのはいいが実際に優勝したら困ると考えている球団首脳は多い。
プロ野球への提言
一、日本プロ野球は試合時間が長すぎる。大リーグをご覧になる方はご存知と思うがその最たる理由は投球間隔の長さだ。今季15秒ルールができたはずだが実際にこれを適用してボールを宣告されたシーンを見たことがない。このルールを厳格に適用すべきだろう。
一、クライマックスシリーズに関して
今の制度下で理論的にはペナントレース二位三位チームは勝率五割を切ることがあり得るしそのチームがクライマックスシリーズを勝ち上がり日本シリーズも制することがあり得る。勝率五割以下のチームが日本一とはこれ如何に。
今の制度を維持するにしても勝率五割以下のチームはクライマックスシリーズ出場権を認めないよう制度改正すべきだ。
一、ホームランのビデオ判定
野球は相撲と違ってホームランでなければプレーは進行している。ビデオでホームランでなかったと判定された場合シングルヒットからランニングホームラン(和製英語)まで可能性がある中どれを取って再開するのか問題が残る。多少人件費がかかるが昔のように左右両翼ポール際に線審を配置するのがいい。ビデオ判定の間ファンを待たせるのも失礼だし間延びしてしまう。
(ジャーナリスト 青木 亮)
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