トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 「脂汗を流す中国首脳部」 外交評論家 加瀬英明
外交評論家 加瀬英明 論集
中国は人類の歴史で、最後の植民地帝国である。
20世紀は植民地帝国が解体した世紀だった。第1次大戦によって、連合軍に対して敗れたカイゼル皇帝のドイツ帝国―アフリカからアジアまで領土を持っていた―と、ドイツと同盟して敗れたトルコ帝国が解体した。それまでトルコ帝国はアフリカ北部からペルシャ湾岸まで支配していたのに、広大な領地を失った。
第2次大戦は大日本帝国、イギリス、フランス、オランダ、イタリア、ベルギー、スペイン、ポルトガルをはじめとする植民地帝国を解体した。冷戦が終わると1991年に、ソ連という大帝国が崩壊してしまった。
今日、地上に残っている最後の帝国が中国だ。満族の国である満州、モンゴル族の内蒙古、新疆、チベットをはじめとする地域は、中国の固有の領土ではなかった。
これから、中国はどうなることだろうか?
中国の経済発展には、目を見張らせられる。世界人口の5分の1にしか当たらないのに、急速な経済発展のために、中国は今日、世界のセメント生産の半分、鉄鋼生産の3分の1、アルミ生産の4分の1を呑みこんでいる。この10年間だけで、石油と大豆の輸入をとると金額にして23陪も増えている。
それでも、中国がはたして経済「発展」をしているのかというと、疑問がある。発展は向上を意味している。
中国の「経済発展」はすさまじい大気汚染と、水質、土壌汚染を引き起こしている。中国は全世界から、石油、鉄鉱石、銅をはじめとする資源を貪欲に買い漁って、輸入している。そのかたわらで、地下水を汲みすぎたために、湖水や川が枯渇するようになって、全国の規模化が進んでいる。ところが、きれいな空気と水は輸入することはできない。
今日の中国は中華人民共和国と呼ばれるが、1949年に建国されてから、60年にわたって一度も自由な選挙を行ったことがない。中国共産党が力づくで支配してきた国である。いつまで、このような支配が続くことになるのだろうか ?
先輩のソ連は1922年に生まれたが、69年後に消滅した。中国は先輩のソ連よりも、長くもつものだろうか?
歴史を振り返ってみると、フランス革命もソ連を生んだロシア革命も、経済が停滞していた社会が経済成長を始めたことによって社会が流動化し、それまでの箍(たが)が緩んだために、ひき起こされた。中国の開放経済が、それに当たることになるだろうか。 (自由20年6月号より)
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