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大相撲春場所も横綱白鵬が6場所連続優勝を果たして通算優勝回数記録を再更新、彼に続く若手の関脇照ノ富士や前頭筆頭の逸ノ城が飛躍し、モンゴル出身力士の勢いばかりが目についた。これは今場所に限ったことではなく、今後も続くことだろう。
現在、幕内力士42人中、外国出身者は17人で、そのうちの10人をモンゴル出身者が占める。大相撲放送の解説者は「次々に出てくるモンゴルの大型力士に対抗できる日本人力士を育成するために、相撲界は抜本的な対策に取り組まなければならない」と言っていたが、そんな逸材がすぐに出てくる当てはない。何しろ、日本人力士の幕内優勝は2006年初場所の栃東以後は途絶えているのだ。
「庇(ひさし)を貸して母屋(おもや)を取られる」という状態だろうが、これは相撲に限ったことではない。テニスのウインブルドン選手権は世界最高峰の大会だが、もとはローカルな大会だった。規約をゆるめたら大成功、世界中から強豪が集まるようになった。反面、開催地イギリスの選手は勝ち上がれなくなった。男子シングルスは1936年のブレッド・ベリー以来、2013年のアンディ・マレーまで77年間も優勝がなかった。女子シングルスは1977年のバージニア・ウェーの優勝が最後になった。
門戸開放した結果、外来勢が優勢となり、地元勢が沈み、淘汰されるのをウインブルドン現象と呼び、経済用語としても使われる。日本ではプロゴルフでもその傾向が見られ、男女とも韓国人ゴルファーが賞金獲得の上位を占めるようになった。
ゴルフと違って相撲は日本の国技扱いされているので、日本人力士の奮起がことさら求められているようだ。人口300万人足らずのモンゴルから、どうして続々と強豪力士が出てくるのか不思議なくらいだが、日本では力士予備軍ともいうべきアマチュア相撲の競技人口がもともと少ない上に、年々減る一方だという事情がある。日本に行って力士になり、大金を稼ぐという夢を持つ少年たちが増えているモンゴルに対して、体格や運動能力に優れた日本の少年には相撲以外の選択肢がいくつもあり、たとえ相撲を選んでも、途中から他競技に移ってしまう例が多い。相撲評論家の中澤潔氏によれば、小学生から社会人までの競技者登録数は5000人に満たないという(宝島社新書『大相撲は死んだ』より)。
外国人勢により日本人が駆除されるのを恐れて、2002年に外国人枠を「1部屋2人」から「1部屋1人」に変えた。あまりにも姑息な対応に思える。かなり前から外国人抜きでは大相撲は成り立たなくなっているのだ。
逆に枠を広げて相撲界もウインブルドン現象を積極的に容認するという道もあるのではないか。モンゴル勢ばかりが幅をきかせているのが不自然なら、世界中から人材を集めるのだ。ある時期、小錦、曙、武蔵丸などハワイ勢が活躍したが、今はなぜか途絶えてしまった。中国や韓国からの力士は少ないが、最近の日中、日韓関係がぎくしゃくしているのと関係があるのか。陸上の長距離ランナーにアフリカからの留学生が多いが、相撲ではどうなのか。
大相撲にはスポーツとしての側面だけでなく、神事的、伝統芸能的な要素もあり、それを失っては元も子もないが、外国人に道を開いた以上、それを進化させるほうが賢明だろう。問題は日本相撲協会の幹部たちの舵取り能力か。
(山田 洋)
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