社会 …社説
ついに戦いの火ぶたが切られた埼玉県知事選挙。4選目を目指す現職の上田氏に対して新人4人が挑戦するという構図だ。
知事選の投票率はここ数回低い数字で推移しており、前回は全国でもワーストであった。
実施年 | 投票率 | 主な候補者 | 構図 |
---|---|---|---|
2003年 | 35.80% | 上田清司(新)、島津昭(新)、浜田卓二郎(新)、坂東眞理子(新)ほか4人 | 土屋知事の辞職に伴う新人同士の争い。 |
2007年 | 27.67% | 上田清司(現)、吉川春子(新)ほか1人 | 自民、民主、公明が応援する現職に対して、共産推薦の新人が挑む。 |
2011年 | 24.89% | 上田清司(現)、原冨悟(新)ほか1人 | 自民、民主、公明が支持する現職に対して、共産推薦の新人が挑む。 |
2015年 | ? | 上田清司(現)、塚田桂祐(新)、柴田泰彦(新)ほか2人 | 民主応援、維新支持の現職に対して、自民県連推薦の新人と共産推薦の新人が挑む。 |
地方創生が叫ばれている今、日本有数の大県たる埼玉県の未来を決める大事な選挙である。投票所に足を運んでもらうため、この知事選どのような視点で1票を行使するか解説をしたい。
まずは3期12年の上田県政に対する評価である。上田氏は関連記事「埼玉を変えた男」にも記されているように衆議院議員時代から数字に強く、就任以降「行政は最大のサービス産業」「県庁を優れた経営体にする」ということを訴え、成果や実績をグラフや図表にして知事室に貼りだし、県庁の組織風土を変えてきた。その結果として、重要犯罪検挙率の都道府県ランキングの大幅改善、企業本社転入率でもダントツ日本一を実現するなど成果を見える形であげてきた。またこれを全国で一番県民1万人当たりの職員数の少ないコンパクトでスリムな組織で実現している。一方、塚田氏は「埼玉県版〇〇」という県独自の戦略を独りよがりと批判し、国の成長戦略との連携を重視している。「戦争法案ノー」を訴える柴田氏は、上田県政を合理化によるサービスの切り捨てと批判し「住民の福祉向上」を政策に掲げている。
次に「2025年問題」への対応だ。「2025年問題」とは団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)の仲間入りすることによって、介護・医療費等社会保障費の急増が懸念される問題である。まさに次の知事はこの問題にサービス面だけでなく、財政面においてもしっかり取り組まなければならない。上田氏は、すでにモデル事業として推し進めてきた健康長寿プロジェクトを全県展開することによって、医療費の削減に取り組むと訴えている。塚田氏は子育て応援による人口減少の食い止め、国との連携で医師数の確保を政策に据えている。柴田氏も医師不足の解消をはじめとする医療水準の確保を重視する考えだ。
最後に今回の県知事選では、多選自粛条例で自身の任期を連続3期までと定めている中での上田氏の4期目の挑戦に対する評価だ。この条例は、もともと多選の禁止を憲法上で定められないという問題を抱えている。そのため努力義務ということになっているわけだ。だから解釈上は条例違反にあたらず、有権者に判断を仰ぐ形が妥当だと考える。4選出馬を条例違反と批判する塚田氏だが、自身が埼玉県庁に4年間出向していた期間におこった「官官接待」「食糧費」問題についてまったく触れないのはどうしたことであろう。
一般的に多選というのは権力の腐敗を生むことは否めないが、権力をいかに行使し県民の生活を向上させるかが知事に求められる資質だ。だからこそ権力の監視という意味でも県政に関心をもってもらい、投票という行為で有権者が政治に参画することが大切だと改めて伝えたい。
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