トップページ ≫ 社会 ≫ 教育 ≫ 地域別の「子どもの学力」と「大学進学率」を考える(1)
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昨今新聞報道などで「地域別の大学進学率」が取り上げられる機会が増えてきました。4年制大学への進学率を見ると,最も高い東京都(62%)と最も低い鹿児島県(29%)では2倍以上の差がついているとのことです。「地域間の経済力の差」を要因に挙げる記事が多い中,小学生の子どもを持つ保護者の皆様にとっては,目の前のお子様の「小学生段階の学力」との相関や「学力の地域間格差」が大学進学率に与える影響が気になるところではないでしょうか。
●地域別の「学力差」を表すとされる2つの指標
地域別の学力差を示す指標として報道でよく紹介されるのが「全国学力・学習状況調査(以下,全国学力調査)の都道府県別順位」です。毎年上位に名を連ねる秋田県・福井県など,都市圏以外の地域の頑張りはすっかり有名になり,何かと話題になる大阪は小学生が41位,中学生が45位(いずれも14年)なのです。ところが,皆様の中にも「この順位が大学受験時の学力と必ずしも一致していない」ことを御存知の方がいらっしゃることでしょう。大学受験時の学力を示す指標としてよく用いられるのが「大学入試センター試験」です。あまり報道されることはありませんが,地域別の平均点が予備校から発表されています。
小学校 | 中学校 | センター試験 | |
1位 | 秋田 | 福井 | 東京 |
2位 | 福井 | 秋田 | 神奈川 |
3位 | 石川 | 富山 | 奈良 |
4位 | 青森 | 石川 | 大阪 |
5位 | 富山 | 静岡 | 京都 |
小学校・中学校・・・14年全国学力調査成績順位
センター試験・・・大手予備校発表,11年大学入試センター試験5教科950点満点
センター試験の都道府県別順位では,表に掲載した上位5都府県以外に続いて,実はこの後6位千葉,7位和歌山,8位兵庫,9位埼玉と,見事なまでに首都圏・近畿圏が続いています。ちなみに小学校の全国学力調査上位地域の結果を見ると,秋田県は37位,福井県は23位,石川県は16位,青森県は44位,富山県は25位と,小学生段階での「地域の教育力」との相関が残念ながら見えてきません。この理由について,保護者の皆様にとってわかりにくい部分が多いため,もう少し詳しく紹介していくことにします。
●2つの指標に相関が見えない理由
ここでは「全国学力調査とセンター試験の質の違い」を紹介します。全国学力調査は小中学生の学力到達度を見るものですから,いわゆる難問は出題されません。都市に住んでいようが地方に住んでいようが全国共通の基礎学力を点検するものですから,都道府県別の順位(平均点)から読み取れるものは「学力がキチンとついていない生徒・児童の割合」になります。よって秋田や福井は「全体的に基礎学力がついている(落ちこぼれが少ない)」と読み取ることはできますが「他地域に比べて優秀な生徒・児童が多い」とは言い切れません。逆に都市圏は,学習習慣はもちろん家庭のライフスタイルが地方に比べて多様化していることにより,基本的な生活習慣から身に付いていない生徒・児童の存在を想像することはできますが,だからといって優秀生が少ないとは言い切れないのです。
これに対して大学入試センター試験は大学合格のための「選抜試験」です。大学受験を考えない生徒は受験しませんし,学力の幅によって得点も大きく変動しますから,この試験の都道府県別平均点からはおおよその「地域ごとの優秀生の割合」を読み取ることができますが,地域ごとの基礎学力を示す指標とは言い切れないのです。詳しくは後述しますが,これらのテストの平均点が低い地域にお住まいだからといって慌てたり騒いだりする必要はないのです。 (続く)
秋田 洋和
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