トップページ ≫ 社会 ≫ 教育 ≫ 地域別の「子どもの学力」と「大学進学率」を考える(2)
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●大学受験時に見られる「地域間格差」の正体
それでは,どうしてセンター試験の得点率や大学進学率に大きな差がついているのでしょうか。そこには,これまで紹介した数字では見えてこない2つの原因があるのです。1つ目は「明らかな情報格差」です。皆さんもご存知のとおり「大学受験は情報戦である」ことを否定することはできません。専門のスタッフが傾向を分析し最善のカリキュラムを組んでいる予備校で「あと5点」を上積みするためのテクニックを入手できる環境にある生徒と,予備校そのものが地域になく,自分が通っている学校が持つ情報に頼るしかない生徒との間にはどうしても情報格差が生じますから,この点においては都市圏のほうが有利といえるでしょう。
そして2つ目は,御存知ない方が多い「センター試験5教科受験率の差」です。
センター試験 5教科受験率 |
各都道府県にある大学数 | |
福井 | 88% | 4(国公立2,私立2) |
秋田 | 81% | 7(国公立4,私立3) |
富山 | 82% | 5(国公立2,私立3) |
鹿児島 | 88% | 6(国公立2,私立4) |
東京 | 29% | 139(国公立14,私立125) |
神奈川 | 29% | 29(国公立4,私立25) |
大阪 | 64% | 56(国公立6,私立50) |
受験率・・・大学進学者数に対するセンター試験受験者の割合
東京や神奈川では,大学に進学する生徒のうちセンター試験を5教科で受験した者は3割にも満たないのです。地元に私立大学がたくさんあるため選択肢は多く,苦手教科(数学など)を捨てても受験できる大学,推薦やAO入試で合格できる大学など,国公立大学受験を前提とせずとも進学先を決めることができます。それに対して地方では,地元の大学の選択肢が少ないため「大学受験=国公立=センター試験」という準備を前提とする高校が多くあります。経済的事情によって「何が何でも地元の国公立へ」という生徒であれば,苦手な数学から逃げることができないままセンター試験を受けるケースもあるでしょうし,センター試験受験者50万人に対して,国公立大学の定員はおよそ10万人しかありませんから,地方においても競争は激しいものがあります。浪人する可能性が都市圏に比べれば高くなるのも当然だといえます。
地方在住の方にとっては,大学受験時の「学力の地域間格差」は気になるところだと思いますが,センター試験の5教科受験率が高い地域の平均点は当然下がります(得点率最下位の宮崎県のセンター試験5教科受験率はなんと94%!)から,このような「大学の選択肢」の地域間格差を考慮せずに,平均点のみで地域の学力差を語ることは少々乱暴と言わざるをえないのです。 いわゆる「地頭のよい」生徒の割合は,地方・都市で変わらないはずです。地頭を鍛えるには,小学生のうちにしっかりと「思考」すること,具体的には「読んで,考えを書く」という土台部分を徹底することが大事です。これはどこの地域に住んでいても出来る事ではないでしょうか。 (続く)
秋田 洋和
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