文芸広場
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荷物を持ちましょうか?から始まった。
十年以上前のはなし。電車で隣の男のひとに話し掛けられた。50代後半だろうか。
別に持ってもらうほどでもないし、知らないひとにそう言われても困る。辞退した。
でも、その先も話し掛けてくる。
そのひとは、手にリンゴだけを持っている。かなり身軽。そういう問題でもないか。でも、何故リンゴ?しかも齧ったあとが付いてるし。
わたしの視線に気づいて、「リンゴは好きですか?」「リンゴには美味しい時期がある。」と続いて、「女のひとにも時期がある」ときた。なにやら嫌な予感。
結局、リンゴが女のひとの話にうつり、こう言われた。
「わたしは赤羽で降ります。わかりますね?」
わかりたくなんかないし、赤羽に用事などない。この男のひとは一緒に降りようと言っているらしいが、怖いぞ。リンゴ星人。リンゴ星にわたしを連れ去るつもりか。
強く辞退し、リンゴ星には行かずに済んだ。
リンゴ。リンゴのあのかじり痕は、今でも目に焼きついている。
それからだろうか。いろんな不思議星人に遭遇するようになったのは。
今日は、電車内で30代とみられる太った男が尻を床にべったりとつき座っていた。後ろに倒れ気味の姿勢で、シャツからは、腹部の分厚い肉がはみ出している。思いっきり。隠そうという気は全くない。
リンゴ星人も怖いが、腹肉星人も不気味な表情を称えている。目を合わしてはいけない。
さて、目的駅に到着。腹肉星人も降りる。歩いていると肉は出ていないので、普通に見える。さっきのはまぼろしだったのか?でも、怖いから距離はとりつつ、ホームを歩く。
ホームからの階段を降りると背後から今度は女性の声が。「チクチク チクチク・・・。」え?何故、チクチク?顔を見たいけど、すぐ背後なので振り返ることが出来ない。
「チクチク」とは、針仕事をする女性の映像が脳裏に浮かぶ。また星人あらわる。
この世はファンタジー。わたしはあの日、リンゴのかじり痕から、地球外に連れ去られた。
檀ままこ
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