トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 南ベトナムを見捨てたニクソン大統領
外交評論家 加瀬英明 論集
ケネディ大統領が暗殺されると、ジョンソンが後を継いだ。
1968年には、ニクソンがハンフリー副大統領と、大統領選挙を争った。
ニクソン候補は、アメリカが衰退しつつあり、「このままゆけば、向こう15年以内に、西ヨーロッパ、日本、ソ連、中国の4ヵ国が目覚ましい経済発展を続けて、アメリカと並び、アメリカはナンバー・ワンの座を失う」「いま、アメリカは国力の絶頂期にあるが、古代ギリシアや、ローマ帝国と同じ轍を踏むことになろう」と訴えて、危機感をさかんに煽った。
ニクソン政権は、ケネディ大統領が始めたことから、「ケネディの戦争」と呼ばれ、ジョンソン政権のもとで拡大して泥沼化した、ベトナム戦争の後始末に苦しんだ。
ニクソン大統領は「もはや、アメリカは世界の警察官ではない」と述べて、ソ連と対決する姿勢を捨てて、それに代わるものとして、ソ連との間に「平和共存」戦略を打ち出した。
1975年にニクソン政権のもとで、アメリカは南ベトナムを、見捨てた。北ベトナム軍がサイゴンを占領したが、最後のアメリカ人たちがアメリカ大使館の屋上から、ヘリコプターで脱出して、沖に浮かぶ空母の甲板に降りた。
アメリカはニクソン政権が登場すると、ケネディのもとで自信を漲らせていたアメリカから、世界に対する姿勢を一変させた。
私はアメリカがベトナムを放棄したことによって、強い衝撃を受けた。
サイゴンが陥落した直後に、私は、月刊『文藝春秋』の1975(昭和50)年5月号に、『楽園は終わった。日本はどうなる』という題で、寄稿した。そこで、
「アメリカが南ベトナムを見捨てたことが歴史の流れであるならば、戦後30年間、日本はアメリカによって守られてきたが、これから向こう30年間、アメリカに同じようにして安全を委ねてゆけるのか、きわめて疑わしい。
日本の安全を守ってきたアメリカの殻は、薄くなってきている。いつか、脆くなるかもしれない。アメリカを信じることができなくなった」
と、論じた。
アメリカはいつまで超大国でいられるか 第2章アコーディオン国家・アメリカ
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