トップページ ≫ 社会 ≫ 教育 ≫ 【高校入試】平成29年度埼玉県公立高校入試の重要な変更点(2)
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(2)学力検査問題の改善
「数学、英語において、取り組み易い問題の比率を増やす」
「学校の判断により、例外的に問題の一部に応用的な内容を含む学力検査(「学校選択問題」という。)を実施することができる」
(埼玉県教育委員会HPより) 数学及び英語の学力検査問題については、正答率が極端に低い問題があるなど難易度の設定等に課題がありました。そのため、数学及び英語の学力検査問題について、受検生一人一人が最後までしっかりと取り組み、力が発揮できるよう内容を改善します。なお、学校の判断により、例外的に問題の一部に応用的な問題を含む学力検査(学校選択問題)を実施することができます。また、「学校選択問題」は県教育委員会が作成します。
【解説】埼玉県の公立高校入試問題は,社会だけではなく数学も「他地域に比べて難しい」ことが知られています。再び東京都立高校入試問題との平均点比較で見てみましょう。
年度別学力検査の平均点
|
埼玉県 | 東京都 | |
数学 | H27 | 48.1 | 62.0 |
H26 | 45.0 | 57.6 | |
H25 | 42.4 | 55.4 |
埼玉県の数字はすべて全日制受検者のもの
東京都の数字は共通問題のもの
東京都の平均点にはカラクリがあって,この数字は「共通問題」と呼ばれるものの平均点なのです。例えば日比谷高校や西高校など,全国的に名の知れた難関校は別の入試問題を使って選抜を行っているため,「共通問題」を作成する際には一般的な中学生だけを想定すればいいことになります。
それに対して埼玉県は入試問題が全県一律ですから,浦和高校を受検する生徒と大学進学者がそれほどいない高校を受検する生徒が同じ問題を解くことになります。浦和高校にしてみれば「問題が易しすぎて差がつかない,大学受験を視野に入れた学力の把握ができない」ということになりますし,それ以外の高校にとっては「あまり難しい問題を出題されると,受験生の得点に差がつかない」悩みを抱えることになります。H24の入試では数学の平均点が「36.5点」まで落ち込んでしまい,そこから改善はされてきていますが,偏差値が高くない高校を受検する生徒には「どうせ難しい問題は誰も取れないから,計算問題だけしっかり正解しておけ!」という指導がまかり通っているのが現状です。
こうした問題を解消する手段として,「数学・英語では取組み易い問題の比率を増やす」「学校選択問題を実施する」という改革が行われるのです。
それでは「学校選択問題」がどのような出題になるのかについて考えていきます。前述の埼玉県教育委員会HPからサンプル問題を見ることもできますが,「問題を見せられてもわからないよ」という人のために,「おそらくこんな感じの解答用紙になりますよ」という例をお見せすることにします。
画像:平成24年(2012年度)日比谷高校一般入試の解答用紙①②③
これは日比谷高校の解答用紙ですが,「記述欄の多さ」に驚かれたのではないでしょうか。これは「計算欄」ではありませんから,解答を求めるまでの過程(途中経過)を,図やグラフも含めて自分で描きこむ必要があります。1つの問題に対するスペースの大きさが示す通り,定期テストの解答用紙で用意されているスペースとは使い方は異なります。数学においては,公式や裏技,テクニックをとにかくたくさん覚えて,求めた答えを書けばよかった時代は終わり,正解へ至る「なぜ・どうして」を採点者に対してわかりやすく説明することが求められます。あるいは,これまでであれば暗記するだけでよかった公式や定理の成り立ちそのものを証明させる出題も増えてくることでしょう。これこそが「21世紀型の学力」と呼ばれているものの正体であることは言うまでもありません。
対して標準の入試問題では,ここ数年に比べて問題は易しくなりますから,中学時代に学んだ基本事項をしっかりと試される出題が増えるでしょう。定期テストでしっかり準備することが入試対策になる一面はありますが,ここでも「記述」は避けて通ることはできませんから,定期テストとは違った準備も必要になります。
【最後に】今回の変更は,新中3生はもちろんのこと,新中2生や新中1生にとっても他人事とは言えません。「自分の志望校によって,受検に対する準備の方法を変えなければならない」のですから,早い段階で方針を決めるに越したことはありません。学校選択問題を採用するであろう高校を志望するのであれば,ここ数年の入試問題で「正答率が10%以下」の難問を攻略できることを最終の目標として普段の勉強に取り組んだり受験勉強を進めなければなりません。教科書の発展問題まで目を通しておくことは必須になりますが,もしも中学校の進度が遅くてそこまで進まなかったとしたら・・・。定期テストの準備とは別に,自分なりの対応策を考えておかないと後で困ることになります。
標準の入試問題が採用される高校を受検するのであれば,先輩や兄姉のアドバイスは通用しなくなります。「数学は捨ててもいい問題があるからさぁ」という声は無視して,普段の勉強で取りこぼしのないように復習を進める必要があります。中1や中2の範囲も含めて,これまで以上に「普段の積み重ねの先に入試問題がある」のですから,特に数学の出来不出来の差は合否に大きく影響してくることが予想されるのです。
教育クリエイター 秋田洋和
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