文芸広場
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ひざをガクッと床についた。立ちくらみだ。
ここは、友人が住むアパートの一室。二十年以上前のこと。「大丈夫?横になっていて。」心配してくれる友人の声をぼんやりした頭で聞きつつ横になる。
あの時のことは、今でも笑い話として友人との会話に出てくる。あの日、友人が一人暮らしする部屋に遊びに行った。ちょうどそこに、友人の母親が来た。そして、お説教が始まったのだ。その頃、友人と親との間には感情の行き違いがあり、スムーズな関係を結ぶことが出来ていなかった。急に登場した母親に驚き、立ったままわたしもお説教を聴くことになった。そうしたら、お説教の内容が自分にも該当することがあり、次第に自分が言われているような気になる。そして、話は止まらない。わたしは、ふらーっと立ちくらみを起こしたのである。
思い返せば、その場の雰囲気に吞まれ易い。その場に漂う感情が、わたしにも宿る。母の代理で行った法事では、故人を偲ぶスピーチに大粒の涙を流す。実は、故人は親戚とはいえ、わたしは会ったことがない。それなのに、泣いているのは何となく恥ずかしい。
そつがない落ち着いたひとに憧れる。わたしは、年齢を重ねた今も、こころが揺れてばかりだ。
檀 ままこ
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