社会
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新聞広告の中で、時には記事よりも注目度が高いのは週刊誌の広告だろう。特に木曜朝刊の「週刊文春」広告を楽しみにしている人は多いはずだ。今年になってから、甘利前経済再生担当相の不正献金疑惑、イクメン代議士の不倫、ショーンKの学歴・経歴詐称、そして芸能人スキャンダルの数々と、スクープを連発している。テレビのワイドショーはそのたびに同誌の早刷りを入手し、後追い取材をして番組を作っている。
この原動力として新谷学編集長の手腕があげられている。テレビのバラエティ番組の中でデーブ・スペクターが「今の編集長は遣り手だから、みんなは気を付けた方がいいよ」とタレントたちに忠告していたくらいだ。
その新谷編集長とは25年ほど前に初めて会ったが、記憶は鮮明に残っている。文藝春秋のスポーツ雑誌「Number」の編集部員だった彼が、当時私が所属していた講談社「週刊少年マガジン」編集部にやってきた。「Number」では漫画家が過去の人気漫画の舞台を訪ねるという連載企画があり、その中に「タイガーマスク」(原作・梶原一騎 作画・辻なおき)が入っていて、資料として漫画単行本を借りにきたのだ。
彼は当時20代半ばだったはずだが、スポーツ雑誌編集者らしくスリムで爽やかな印象だった。これが縁で時々電話で話すようになり、お互いの雑誌を送り合うようになった。若いのに律儀な面があるのも感じた。
その後、「週刊文春」編集部に移ったとの連絡があった。編集者としてのセンスが良いから異動先でも十分やれるだろうと思った。ただ、スポーツ誌編集者としての印象が強かったので、欲望渦巻くドロドロした世界を扱う週刊誌の仕事はそれなりに大変だろうと案じた。
何年かして、マスコミ内部情報が売り物だった「噂の真相」誌に「週刊文春のエース、S記者」というフレーズを見かけるようになった。最初は別のSさんかと思ったが、新谷氏のことだとわかり、私の心配は杞憂だったことを知った。10年ほど前に私が定年退職したとき、編集次長になっていた彼は、紀尾井町の文藝春秋に近い店で一席設けてくれた。律儀さは相変わらずだった。
その後は年賀状だけの付き合いになったが、今年は出すのをためらった。昨年の10月8日号で、男女の性風俗を描いた江戸時代の春画をグラビアと記事で特集したことで、会社から「編集上の配慮を欠いた点があり、読者の信頼を裏切ることになった」として、編集長は3か月間の休養を命ぜられていたからだ。春画の企画は大評判となった永青文庫の「春画展」と連動したもので、この処分には首をひねる人が多かった。
ところが、当の新谷氏から「1月3日に復帰しました。新たな一歩です」との年賀状が届いた。そして復帰するや、毎号のようにスクープ連発、転んでもただでは起きない編集者魂には脱帽するしかない。
山田 洋
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