トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ アメリカの手前勝手な理想主義
外交評論家 加瀬英明 論集
アメリカは、二十世紀に入るころには、北米の全大陸を手に入れてしまったので、太平洋に乗り出していった。大西洋の対岸には、旧世界がひろがっていたし、アフリカ大陸はヨーロッパ諸国によって、分割されていたからだ。
1898年に独立国だったハワイ王国に言い掛かりをつけて、平和な島に海兵隊を奇襲上陸させて、強引に併合した。
同じ年に、スペインに米西戦争を仕掛けて、フィリピン、グアム島を奪い取った。
いまでも、アメリカは「マニフェスト・デスティニー」によって、動かされている。アメリカ国民は、全世界が自分のものだと、思っている。
もっとも、帝国主義の時代が終わったから、新しい領土を求めることはしないが、世界をアメリカのビジネスと、“ビッグマック(マクドナルドのハンバーガー)文化”によって象徴される、せわしい生活習慣や、抑制を欠いた浪費をすすめる、エンターテインメント文化のもとに置くことによって、アメリカ化しようとしている。人生そのものが、エンターテインメントでなければならない。
「アメリカ化」と「民主化」は、同じ意味の言葉だ。
ブッシュ(子)政権は、イラクを手始めに、中東をアメリカのイメージに合わせてつくり変えて、「民主化」しようと意気込み、アフガニスタンとイラクに、大軍を送り込んだ。
イラクは中東民主化の第一歩と、なるはずだった。
このように、アメリカはしばしば外国に大量軍事介入する。TPP(環太平洋戦略的経済提携協定)をはじめとするグローバリゼーションも、まったく同じ情熱から発している。
清教徒をはじめとして、ヨーロッパから新世界に到着した信仰に篤い人々は、アメリカ大陸が、新約聖書の『マタイ伝』に出てくる、イエスがいった「丘の上の光輝く都市」であると信じた。歴代の大統領は、ケネディから、カーター、レーガンまで、演説のなかで、この言葉を好んで用いた。
アメリカ国民は、世界をアメリカ化することが、正義であり、当然なことであると、思い込んでいる。
このような手前勝手な理想主義から、世界に対して、お節介を焼くのだ。アメリカはユートピア思想によって、動かされている。
アメリカ人にとっては、全世界が「約束された地」なのだ。アメリカが世界で唯一の正しい国であるという信念に基づいて、建国した国なのだ。
アメリカはいつまで超大国でいられるか 第3章お節介で不思議な国・アメリカ
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